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自分がかえって

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第三章

「結婚した時から手は抜いていない感じよ」
「そうか?それでもな」
「太ったっていうの」
「ああ、ちょっと気を付けた方がいいんじゃないか」
「おかしいわね、食べる量も変わってないのに」
 双葉は今は家の中で漫画を読んでいる、漫画の単行本は右手にあって左手にはたけのこの里がある。
「お酒も飲んでないし」
「お前お酒飲まないな」
「ええ、サイダーとかコーラだけど」
「それでも太ってきたぞ」
 実際にというのだ。
「身体壊さない様にはしろよ」
「大丈夫でしょ、健康診断でも引っ掛かってないし」
「だといいがな」
「そう、そりゃ私だって健康には気をつけてるから」 
 住んでいる市の健康診断を毎年受けて健康にはチェックしている、そこでの診断結果では健康そのものである。体重も若い時と然程変わっていない。
 だから双葉も夫にこう返した、若い時と比べて幾分くたびれた感じのしてきた彼に対して。
「太ってたらね」
「わかるか」
「そうよ、変わってないわよ」
 笑ってこう言った、それで今度はこんなことを言った。
「今度同窓会だしね」
「ああ、そうなんだな」
「その同窓会にも出るけれど」
「変わっていないってか」
「言われるわよ」
 双葉は明るく笑って言うばかりだった、それでだった。
 同窓会、高校一年の時のそれに出ることを楽しみにしてもいた。そして当日お洒落をして同窓会に出たが。
 ここでだ、双葉は長くて高校以来会っていないかつての友人達にこう言われた。
「あんた太ったわね」
「学生だった頃に比べて」
「腰にお肉付いてきて」
「全体的にそうなったわね」
「顎にもお肉付いて」
「えっ、皆旦那と同じこと言うわね」
 お洒落をしてスーツを着たがそのことを言われずに身体のことを言われて驚きを隠せない顔で言うばかりだった。
「太ったかしら、体重はね」
「変わっていないっていうの?」
「高校の時と」
「そうだったっていうの」
「そうよ、別にね」 
 この前の健康診断の結果から答えた。
「本当に。身体何処も悪くないし」
「いえ、実際によ」
「あんた太ったわよ」
「どうもね」
「少なくとも一回りはそうなったわよ」
「明らかにね」
「そうかしら」
 友人達に言われても信じられなかった、だが。
 友人の一人に高校時代の自分の姿をスマホから見せられた。そこには上は白の体操服で下は黒の半ズボンという通っていた高校の体育の授業の時の姿の自分がいた。
 そして今の自分を自分のスマホで映してチェックするとだ、明らかだった。
 高校時代より太っていた、それで双葉は愕然となってしまった。
「何で?体重本当に変わってないのに」
「だから脂肪ついたのよ」
「若い時より筋肉落ちてね」
「高校の時はあんたバレーボールしてたじゃない」
「部活朝練も含めていつも出てたでしょ」
「それで身体も引き締まって筋肉ついてて」
 それでというのだ。
「その分の体重だったのよ」
「それが歳取って筋肉落ちてね」
「運動もしなくなって」
「だから体重はそんなに変わってなくても」
「脂肪は付いてね」
「それまでの筋肉の分」
「太ったのよ」
 そういうことだというのだ。 
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