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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第二十一話



「――ウォォォォォッ!!」


「――オラァァァァッ!!」


――戦闘に入ったと同時に、武器を手にリヒターさんに向け走り出すカイウスと、ラタモードに入ったエミル。
二手に別れカイウスは右から、エミルは左からリヒターさんに斬りかかる。

だが、リヒターさんはそれを、カイウスの攻撃を剣で、エミルの攻撃を斧で防ぐ。


「フッ………陽流・壬ッ!!」


「ぐっ!?」


「うわぁっ!?」


直後、リヒターさんが叫ぶと同時に、リヒターさんの周りから水柱が現れ、攻撃を防がれ近距離にいたカイウスとエミルに水柱が直撃する。


「エミル、カイウス!退いてっ!――……魔神剣・双牙ァッ!!」

エミルとカイウスに向けられる更なる攻撃を避けるため、エミル達を退かせる隙を作ろうと斬撃を二つ飛ばす。


「甘いな……陰流・丁ッ!」


飛ばした斬撃を、リヒターさんは迷うことなく剣と斧を震った瞬間、大きな爆炎が上がり、斬撃を消し飛ばした。

そう、わかった刹那――


「陰流・葵ッ!!」


「な……っ!?」



爆炎が晴れたと同時に、突如、一瞬で目の前へと現れたリヒターさんに驚き、反応が遅れる。
ッ…ヤバ……ッ!


「フンッ……陰流―「……苦無閃……」――チィッ」




リヒターさんの攻撃が来る、と思った瞬間、僕とリヒターさんの間にクナイが飛び、リヒターさんが後退した。

「…ハァ…ありがとう、メリア…」


「……ん……」


リヒターさんが距離を置いたのを見てなんとか呼吸を整え、リヒターさんの攻撃を妨害したメリアに礼を言う。

それにしても……


「くっ……流石に強い……」


「あぁ…攻撃の一つ一つが重いし……中々攻撃を通させてはくれねぇな…」


体勢を戻したカイウスとエミルが、構えを崩さないリヒターさんを見ながらそうぼやく。


二人の言うとおり、リヒターさんの攻撃は一つ一つが強力で、変則的過ぎる。



「フン……こんな腕で俺と闘おうとは……俺も甘く見られたものだな」


「ッ……なんだと…っ!?」


「カイウス、落ち着いてっ!」

そんな僕達に、リヒターさんは挑発するようにそう言って、鼻で笑うような仕草を見せると、カイウスがリヒターさんに向け今にも飛びかからんばかりの勢いを見せるが、慌ててカイウスを静止する。
駄目だ…このままだと、リヒターさんのペースに飲まれて本当に、リヒターさんに手も足も出せずに終わってしまう。





「……再度、言っておく。俺はお前達を精霊に会わせるつもりはない。…無駄な怪我を負いたくなければ、早々に此処から立ち去れ」


「……嫌です」



僕の返答に、リヒターさんの眉が僅かに動く。

「……ほう。俺との力量差が分かっていながら…まだ俺に勝てる、とでも思っているのか?」



「いえ、正直、勝てる自信なんてないですよ。もし、僕がギルドにも何も属してない、あなたの言うような精霊を利用するような人間なら、今すぐ逃げ出すくらいの力量差ですから」


「……そこまで分かっていて、ならば何故、逃げようとしない?」


僕の言葉に、リヒターさんは武器の切っ先を此方に向け、威圧を掛けるようにそう、言ってくる。
正直、本当にこの力量差は怖い。エミルやカイウス、メリアは大丈夫そうだけど、正直な話、僕は恐怖負けして今すぐ逃げ出したい気持ちだ。
だけど…………


「……信じてもらえなくても構いません。ただ、僕達には、精霊を守るアナタを倒してでも精霊に聞きたい事がある。ただ……それだけです」


真っ直ぐと、リヒターさんに向けそう言って、僕は木刀を構え直す。カイウス達も、それに頷き、揃えるように武器を構えた。



「――……そうか。ならば…――」


僕達を見て、リヒターさんはフッ、と口元で笑って見せ……


「――その言葉……俺を倒して証明してみせろっ!」




そう言って、武器を構え一気に威圧を跳ね上げた。
見ていて分かる。アレは今度は一撃でももらおうもんなら確実に沈められる。


「……エミル。あの人に強力な攻撃を与えるぐらいの余力は残ってる?」


「ん……あぁ、まぁ残ってるが……それならオレよりもカイウスやメリアの方がいいんじゃないか?」

僕の言葉にエミルは一度頷いた後、少し間を開けそう聞いてきた。

「うん…本当ならそれがいいんだろうけど……メリアとカイウスにもちゃんと役目があるから、最後はエミルに決めて欲しいんだ」

「……まぁ、分かった」



「それで、俺達は…?」


「ん……カイウスとメリアは……―――」



カイウス達にある程度、僕の考えを伝えると、二人は小さく頷いて答えた。
問題はリヒターさんに上手くいくかどうかだけど……今はするしかない。


「――作戦は決まったか…?」


「はい。待っててくれてありがとうございます」


「そうか……。ならば……行くぞっ!」





リヒターさんの声を同時に、再び戦闘は始まる。
リヒターさんは武器を構え、此方に向け走り出す。


「カイウスっ!!」


「あぁ、任せろっ!」


それに対し、先にカイウスを先行させ、僕達は散り散りに走り出す。


「フン……何を考えているかは分からんが……纏めて叩き潰してやろうっ!」


「そうはさせるかっ!――目覚めろ、俺の野生の中の魂っ!!」


カイウスがそう叫んだ直後、カイウスの体が獣に変わっていく。そう、『獣人化』だ。


「ほう…。お前はリカンツだったか……。成る程、厄介だなっ!」


「うおぉぉぉぉっ!皆をやらせてたまるかあぁぁぁっ!!」




声と同時に交わる拳撃と剣撃の音が響く。


『――カイウスには一番危険だけど、リヒターさんを誘導する囮になって欲しいんだ。それこそ、今のリヒターさんのあの状態ならキツいだろうけど、獣人化しないと上手く対応出来ないかもしれない。もし誘導が上手く言ったら僕が合図を出すから、その時は―――』


「―――カイウスっ!!」


「っ……おうっ!!」


「ぬぅ……っ!?」


僕の声に反応し、カイウスがリヒターさんから後退する。今リヒターさんがいる位置は、大分距離を置いているが丁度僕とメリアの中間位置にいる。
よし、いけるっ!!



「ハァァァァッ!裂空刃ッ!!」


「……風刃縛封……」



同時に放たれる真空波の多段の居合い斬りと鎌鼬のような風の檻。
両方からの広範囲の攻撃に、リヒターさんも思わず防戦に入る。




「ぐぅっ!?っ……だが、この程度の攻撃などっ!!」


「今だっ!エミルっ!!」


「うおぉぉぉぉぉっ!」


防戦のまま、リヒターさんが言う中、僕は最後にエミルに合図し、僕の隣を、光の輪を周りに出現させた、限界突破《オーバーリミッツ》したエミルが駆け抜け、リヒターさんに向かう。
そう、僕とメリアはあくまでリヒターさんに一瞬でも隙を作る役だ。後は……エミルが決めてくれるっ!

「なん……だとぉぉぉっ!?」


「これで……沈めぇぇぇっ!!」





オーバーリミッツの効果により、急接近してきたエミルに、先程まで僕の『裂空刃』とメリアの『風刃縛封』を防いでいたリヒターさんはそれの対応に遅れ、エミルから放たれる無数の斬撃に直撃する。


「がっ……あぁぁぁぁっ!!」


そして斬撃の最後に放たれる衝撃波を受け、リヒターさんは音と共に、後方の氷の壁まで吹き飛んだ。



「――…ハァ……ハァ……っ!」


「エミルっ!……大丈夫…?」


「……ぁ、う、うん……大丈夫だよ…」


氷の壁まで吹き飛んだリヒターさんの姿を確認し、限界が来たのか、片膝をついたエミルに駆け寄ると、通常時のエミルに戻っていた。多分、リヒターさんのあの様子戦闘が終わった、と認識したんだろう。
そう思って再びリヒターさんの方を見てみると……――


「――ハァ…ハァ……くっ…!」


「ま……マジ…かよ……っ!?」


多少の傷は見えるがリヒターさんは、再び立ち上がり、武器を手に持っていた。
決めた、と思っていたカイウスも思わず驚きの声を出した。


「ぐっ……中々効いたぞ……だが……まだまだ……っ」


「っ……くそ……っ」


リヒターさんの様子に思わずそんな声が漏れる。
正直形勢はヤバい。リヒターさんは多少ダメージはあるけど、俄然闘えそうたが…此方側は、僕とメリアは多少ながら健在、カイウスも一見大丈夫そうに見えるけど……『獣人化』で体力の消耗が見られる。エミルはエミルで体力は勿論だけど…ラタモードから解放されてるから確実に戦えそうにない。
くそっ……どうするっ!?
そう、思った時であった…。


「そこまでよ。闘気を収めて、リヒター」

「なっ……しかし……」


「大丈夫よ。そのヒト達は、敵ではないわ」







そう、女性の声が聞こえた後、何もなかった筈の場所から、一見、武道家にも見える服装の青の髪の女性が現れた。
あれは……やっぱり……


「はじめまして。私は、氷の精霊セルシウス。あなた達が知りたいことに答えるわ」

そう、『氷の精霊』セルシウスが、そこにはいたのだ。


―――――――――――――


「それじゃ……まず世界の始まり、創世の時について知りたいんですが……」


それから暫く、リヒターさんやエミル、カイウスの体力回復をして落ち着いた後、僕はセルシウスにそう言葉を出した。


「創世の時…ごめんなさい。それについては答えられないわ」


「ええっ!?そんなぁ…」


セルシウスからのまさかの返答に、後ろにいたエミルから思わずそんな声が聞こえた。


「だって、精霊にも世界の始まりの事はわからないんだもの。精霊という存在は、世界が創られた後に生まれた者。わたし達は、マナを自然界の現象に作用させる為に生まれたのよ。そして、星晶により封じられていた『あの存在』の事しか知らないわ」


「『あの存在』……?」


セルシウスの説明を聞きながら、その途中に出た単語に思わずそう聞き返してしまう。


「……わたし達、精霊にもわからないの。ただ、精霊が生まれる以前に、既にこの世界にいたものの様よ。精霊ですら届かない次元にいる、何か歪んだ力…そして、それが大きな災厄となる事を、本能的に察知しているだけなのよ」


「大きな災厄になる、歪んだ力…。それを、星晶が封じていたの?」



エミルの質問に、セルシウスは小さく頷いてみせる。


「ええ。けれど、その封印は解かれてしまったわ。星晶を人々が採り尽くした事で…。だから、世界樹は『あなた』を遣わせ……そして、『あなた』を呼び込んだのかしら?」


そうセルシウスは言った後、一度メリアを見た後……僕の方を見た。
……それって…一体…?


「あなた達はまだ気付いてないのかしら……『ディセンダー』に……『イレギュラー』さん?」



――その言葉は自然に、周りに響いた気がした――





 
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