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教会の狼男

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第五章

「ですが人ですから」
「だからですね」
「神父でもありますので」
 このこともあってというのだ。
「間違っても」
「左様ですね」
「そうです、ですが日本に来て」
 それからというのだ。
「はじめてこの姿になったのですが」
「それでもですか」
「驚かれなかったとは」
 美里に驚愕の顔で述べたのだった。
「はじめてです」
「そうですか」
「まことに」
 こう答えたのだった。
「まさか」
「ですから狼は人を襲わないとわかってますから」
「驚かれないですか」
「神父をされていることの方が驚きです」
「信仰心故に。そして日本でもです」
「こうしてですか」
「来て布教と信仰に勤しんでいます」
 そうしているというのだ。
「今も」
「そうですか」
「そして」
 神父は美里だけでなく文彦にも言ってきた。
「この度は」
「はい、クリスマスなのでお祈りに」
「来て頂けましたか」
「そうです」
 まさにというのだ。
「それで、です」
「では」
 それならとだ、神父は頷いてだった。
 二人の祈りを受けた、その後で。
 二人は神父と別れ教会を後にした。そのうえでマンションの中で話した。
「別にな」
「ですよね」
「神父さんが狼男でも」
「何もしないなら」
 それならとだ、文彦は言った。
「いいですね」
「結局はね」
「夜に変身しても」
 気をつけないとそうなってもというのだ。
「別に、ですよね」
「悪事働く訳じゃないから」
「構わないですね」
「外見は人間でも」
 狼男にならずともとだ、美里も言った。
「それでもね」
「中には人間じゃない奴いますからね」
「餓鬼道に堕ちた様な」
「そんな奴いますよね」
「そんなのと比べたら」 
 それこそというのだ。
「ずっとましよ」
「そうですよね」
「そう、本当にね」
 美里はさらに言った。
「そんな人と比べたら」
「あの人はずっといいですね」
「そうね、じゃあね」
「じゃあ?」
「宗教違うけれど」
 それでもとだ、美里は文彦に話した。
「またね」
「あの教会にですね」
「行きましょう」
 こう言うのだった。
「そうしましょう」
「そうですね、宗教は違っても」
「それ言ったらクリスマス楽しめないですし」
「ここは日本よ」
 この国だからだというのだ。
「もうね」
「最初からですね」
「そんなこと言ったらね」
 それこそというのだ。
「野暮ってものよ」
「ですよね、本当に」
「だからね」
「そうしたことは考えないで」
「それでね」
「またですね」
「あの教会に行きましょう」
 美里は笑顔で話した、二人はもうかなり飲んでいて次の日は仕事なのでこの日は休んだ。そして時々あの教会に行った。神父のいるその教会に。そして神父と世間話も宗教のことも楽しく話したのだった。


教会の狼男   完


                   2019・11・29 
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