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冬の刺激

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第一章

               冬の刺激
 真弓周大はこの時かなり嫌な顔をしていた、それでどうしてもと言う姉の美優にこんなことを言った。
「お姉ちゃん一人で行けばいいのに」
「悪いけれど付き合って」
 美優はその弟に困った顔で返した。
「今日は」
「プールなんて行かないよ」 
 周大は泳ぎは得意だ、だが今は冬だ。それでプールは嫌だというのだ。
「幾ら温水でもね」
「寒くないわよ」
「寒くなくても嫌だよ」
 どうしてもという言葉だった。
「それよりもゲームしていたいよ」
「お父さんが新作買ってくれたからよね」
「それしてるから」
 家でずっと、とだ。はっきりしたやや吊った目に眼鏡をかけている姉の顔を見て言った、姉ははっきりした顔で色白だ。黒髪を短く首の付け根でボブにしている。背は一六〇ない。高校一年生でまだ小五の周大にとっては普段は優しい姉だ。
「いいよ」
「そう言わないで」
「お兄ちゃんは駄目?」
「兄さん今大学と部活で忙しいでしょ」
 二人の兄はというのだ。
「だからね」
「僕なんだ」
「お母さんプールとかは」
 そうした場所はというのだ、要するに肌を出す様な場所は。
「誰か家族の男の子が一緒じゃないとって言うから」
「それどうしてなの?」
「ボディーガードよ」
 所謂虫除けだというのだ。
「それが必要だからっていうのよ」
「僕小学生だよ」
「小学生でもいいの」
 虫除けだからだというのだ。
「相手が寄らないから」
「寄らないって」
「だから一緒に来て、友達とも約束したし」
「お友達?」
「早紀ちゃんと麻里佳ちゃんね」
「誰、その人達」
「私の部活の友達よ」
 学校、美優が通っている学校で同じかるた部にいる二人だ。
「その娘達と行くから」
「もう約束したから」
「どうしても行かないといけないけれど」
 それでもというのだ。
「お母さんがそう言うし」
「お兄ちゃんはいけないから」
「あとお父さんはね」
 もう一人の男の家族はというと。
「今日お仕事だし普通お父さんとは行かないでしょ」
「そうかな」
「友達と一緒にプールに行く時は」
「そうなんだ」
「あんたもそのうちわかるわ、とにかくね」
「一緒に来て欲しいんだね」
「アイス買ってあげるわ」
 美優は普段の優しい姉の顔も出した。
「チョコレートもね」
「じゃあ両方」
「それでいいならね」
「ええ、来てね」
「水着は?」
「プールで借りられるわ、私は自分の水着持っていくけれど」 
 そうするとだ、美優は周大に自分のことも話した。
「あんたはそうしたらいいわ」
「それでどのプール行くの?」
「八条プールよ」
 このプールだというのだ。
「そこに行くわよ」
「それじゃあ」
 こう話してだった、そのうえで。
 周大は美優に連れられてプールに行った、すると。 
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