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ピンクのモーツァルト

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第四章

「かけている粉はピンクです」
「とかくピンクで統一しています」
「男であるのに」
「そうしています」
「どうされますか」
 側近の一人がここで皇帝に問うた。
「この度は」
「どうするか?」
「はい、参上しましたが」
 側近は皇帝に畏まって述べた。
「恰好が恰好ですので」
「帰る様に言ってだね」
「着替えてもらい」
 ピンク色の服を脱いでというのだ。
「もう一度です」
「宮廷に参上をだね」
「してもらうということで」
「いや、構わないよ」 
 皇帝はその側近に笑って答えた。
「一向にね」
「ピンク色の服でもですか」
「その色でもだよ」
「構わないのですか」
「この宮廷でピンク色は禁じられているかな」 
 皇帝はその側近だけでなく今彼の前にいる全ての側近達に問うた。
「この色は」
「そう言われますと」
「違います」
「ピンク色を用いることは禁じられていません」
「かつてのロシアと違います」
 彼等もこの国の話をした。
「ピンク色はいいです」
「一向にかまいません」
「女性でなくてもです」
「特に」
「ではだよ」
 平然としてだ、皇帝は側近達に話した。
「皇帝である朕にしても禁じた覚えはないし」
「それで、ですか」
「構いませんか」
「今御前に参上しても」
「むしろ彼の行く先を防ぐことはならない」
 ピンク色の服を着ていてもというのだ。
「そう告げておくよ」
「左様ですか」
「それではですか」
「これより御前に参上してもらいますか」
「陛下の御前に」
「朕が呼んだからね」
 是非にと言うのだった。
「そうさせてもらうよ」
「陛下がそう言われるなら」
「それならです」
「我等も異存はありません」
「それでは」
 側近達もこれで言うことを止めた、そしてだった。
 モーツァルトは皇帝の前に参上し彼と話した、話したのは音楽の話だったがその話が終わってからだった。
 皇帝は玉座からモーツァルトに尋ねた。
「モーツァルト君、君の今の服だが」
「如何でしょうか陛下」
「面白い服だね」
 こう彼に話した。
「実に」
「そう言って頂けますか」
「うん、君らしいね」
「面白いと思いまして」
 モーツァルトも笑っていた、そのうえでの言葉だった。
「それで、です」
「この服をだね」
「着ています」
「そうなのだね」
「近頃この色が気に入っていまして」
 ピンク、この色がというのだ。
「それで、です」
「服もだね」
「そうしてきました」
「成程ね」
「どうでしょうか」
「今言った通りだよ」
 面白いとだ、皇帝はモーツァルトに答えた。
「実にね」
「それは何よりです」
「そう、ただ素直に言わせてもらうと」
「似合わないですか」
「今一つかな」
 こう彼に言うのだった。
「どうも」
「そうですか」
「そんな気がするよ」
「似合ってなくてもです」
「好きだからだね」
「この服を着ています」
 そうしているというのだ。 
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