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漢の意地

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第二章

「政は不得手であり」
「ああなったな」
「それは元も同じです」
 文天祥は皇帝に言い切った、それも強い声で。
「今は強勢でもです」
「やがて政にしくじりか」
「衰えます、だからです」
「今は守りを固めて耐えるべきか」
「強勢であろうとも」 
 このことは事実だが、というのだ。
「そうしていきましょう」
「時を待つべきか」
「今は」
 これが彼の考えでありとかく元に対して強硬策を主張していた。そして元が攻めてくると即座にだった。
 この時彼は江西の南である徹州にいた、だがそれでも民達に言った。
「私はこれより都に行く」
「臨安にですか」
「あちらにですか」
「私一人でも行ってだ」
 そのうえでというのだ。
「都と帝、そして宋をだ」
「救われますか」
「そうされますか」
「元を倒す」
 彼は言い切った。
「そうする為に行く」
「一人で行くことはありません」 
 ある逞しい若者がここで文天祥に言ってきた。
「私もお供します」
「共に来てくれるか」
「私もです」
「私も行きます」
 他に多くの若者達も続いた、そうしてだった。
 多くの者達が文天祥と共に行くことを誓った、文天祥はその彼等に武器や鎧を与えてそのうえで言った。
「都に行くぞ」
「行きましょう」
「そして帝と宋をお救いしましょう」
「その心と命を預かった」
 切れ長の目は小さいがその光は強い、色は白く知性が感じられる顔であり面長で整ったもpのである。尚且つ生気に満ちている。
 背が高くすらりとしている、だがどうにも着ている鎧も似合っていない。
 だがそれでもだ、彼は鎧を着込んで言うのだった。
「ではだ」
「これよりですね」
「都に向かいますね」
「そしてそのうえで」
「帝と国を救いますか」
「そうする、当然民達もだ」
 宋の彼等もというのだ。
「いいな」
「はい、それでは」
「これから兵を進めましょう」
「宋の為に」
「私はこの全てを宋に捧げる」
 命だけでなく何もかもをというのだ。
「その私が駄目というなら」
「それならばですか」
「その時は」
「見限ってくれても構わない、一人でもだ」
 文天祥だけでもとだ、彼は言うのだった。
「私は行く」
「そうされますか」
「ではです」
「我等も行きます」
「そうさせて頂きます」
「文様と共に」
 周りの者達は文天祥に従った、誰も彼を見捨てることはなかった。それで口々に言ってそうしてだった。
 誰もが剣や槍、弓矢を持ち鎧を着て文天祥と共に都に向かった。そうして元の軍勢に向かうがこの時にだった。
 文天祥の軍勢を見て宋の者達は歓喜した、だが元の者は彼の軍勢を見て言った。 
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