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木の葉詰め合わせ

作者:半月
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本編番外編
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  彼と彼女の甘味事情

 
前書き
IFイズナ生存ルート(うちはと和解済み) 

 
「やっぱりこの甘味処の三色団子は美味しいね! みたらしも捨て難いが、ここはやっぱり素甘だよ」
「いえいえ、それよりもこの草餅も忘れてはいけませんよ。蓬の爽やかな香りと中の餡の調和が上手くとれている。甘さ控えめの三色団子もいいですが、やはり甘味処に来たのであれば甘いものを食べたいものです」

 互いに意見を戦わせながら、差し出された湯のみの中の緑茶を一息に飲み干す。
 はあ、しっとりとした甘さと緑茶の芳醇な香りが絶妙なハーモニーを構成している。甘い物が人生を幸せにしてくれるとは昔の人はいい事を言ってくれた物だ。

「おばちゃーん! 今度オレの方にも草餅を一つ追加で!」
「僕の方にはみたらしを三皿と三色団子一皿お願いします!」

 周りで午後の休息に来ていた人達が驚愕の視線で私達を見つめているが、どうしてだろう。
 この程度の量じゃまだ腹八分目にも満たないって言うのに。

「お、お待たせ致しました。ご注文の品です……けど」
「ん?」
「ほ、本当にこれ以上召し上がられるのですか? 火影様」

 赤い座椅子の脇には空いた皿が山ほど積み上がっている。
 そちらへとちらちらと視線を寄越しながら、訊ねて来る女の店員さんの言葉に私は隣に座っていたイズナ君と目を合わせた。

「イズナ君、イズナ君。まだまだ平気だよね?」
「ええ。こんなにも美味しい物ならまだ二十皿は平気です」

 ふっ! それでこそ木の葉の里の甘味メンバーの同士だ。
 にこにこと笑っているイズナ君の表情が輝いて見えるのは気のせいでもなんでもない筈。
 例え彼の周りに私の倍以上の空いた皿が積まれていたとしても、その朗らかな微笑みはちっとも消え失せはしない。
 寧ろ更に輝きを増している。
 引き攣った表情の店員さんがお代わりのお皿を置いて下がった後、私は手にしていた湯のみを掌中で弄びながら、イズナ君の横顔をちらりと眺める。

「どうしましたか、火影様?」
「いやいや。こうして同じ甘味を愛する同士がいてくれて嬉しいなぁ、と思って。猿飛殿も扉間も甘いもんはダメだからね」
「僕の方こそ兄さんが甘い物は嫌いなので、こうして火影様と一緒に甘味処巡りが出来て嬉しいです」

 優しく微笑んでくれるイズナ君。ほんと、つくづくあの仏頂面しか浮かべない兄とは対照的だわ。
 その微笑みを目にした周囲の女の子達の頬が赤くなっている。
 将来はさぞかし女の子に持てる男になるだろうな、と思っていたが事実そうなったな。

「甘い物が嫌いだなんて、人生損している様よなぁ」
「同感です。特に兄さんの場合、不愉快な誰かを思い出すから甘い物は白子の次に嫌いなのだそうです」
「へー、あいつ白子とか嫌いだったのか。今度差し入れしてやろうかな」

 でもそんな事をしたら、まず間違いなく須佐乃乎の一撃も来そうだから止めておこう。
 邪な考えが脳裏を巡るが、頭を振って霧散させる。いかんいかん、人の嫌がる様な事をして楽しむだなんて、私はあの野郎と違ってSではないのだ。

「火影様の言う通りですね。嫌いだって突き放すよりも先に、試しに口にすればいいのに。そうしたらきっと、病み付きになると僕は思うのですが」
「だよねぇ。流石はイズナ君、いい事言うね」

 愉しそうに笑っているイズナ君に相槌を打って、もそもそと草餅を口に運ぶ。
 甘い餡と蓬の風味が口一杯に広がった。
 
 

 
後書き
個人的にイズナは甘党だと思います。イタチと同じく。 
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