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オズのキャプテン船長

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第十幕その五

「物凄く打ったんですよ」
「ベーブ=ルースよりもだね」
「三冠王を獲得して」
「ホームラン王、打点王、首位打者だね」
「阪神を日本一にしたんです」
「そうしたことがあったからだね」
「今も愛されています、バースさんご自身も」
 ご本人もというのです。
「今も阪神ファンの人達を大事にしてくれますし」
「それは当然だね」
「当然ですか」
「自分をそこまで愛してくれる人をね」
 それこそとです、船長は恵梨香に答えます。
「大切にしない人はいないよ」
「そうですか」
「だって生まれるずっと前に活躍していたのに恵梨香も好きだね」
「はい」
「そこまでなんだからね」
 深く愛してもらっているからだというのです。
「大切に想わない筈がないよ」
「そういうことですか」
「わしから見ても恵梨香の想いは強いしね」
「その人の背番号の数字も好きですし」
「何番かな」
「四十四番です」
 この数字だというのです。
「あと私一、六、七、十、十一、十六、十九、二十二、二十三、二十八、二十九、三十一も好きです」
「それぞれ好きな選手が着けていたんだね」
「そうでした、そのうち十と十一、二十三は永久欠番です」
 恵梨香はこのこともお話しました。
「特に十一番は」
「好きなんだね」
「村山実さんという人の背番号で」
 それでというのです。
「大好きです」
「四十四よりもかな」
「同じ位です」
「その村山さんも幸せだね」
「幸せですか」
「ご自身が活躍したずっと後でも好きな人がいるんだから」
「お祖父ちゃんが若い頃の人でした」
 恵梨香はこのこともお話しました。
「凄いピッチャーだったんです」
「その人はピッチャーだったんだね」
「誰よりも必死に投げて阪神が好きだった」
「そうした人だったんだね」
「そうでした」
「恵梨香は素敵な人達を好きみたいね、ではね」
 トロットは恵梨香のお話をそこまで聞いて微笑んで言いました。
「これから別の素敵な人達のところにね」
「行くんですね」
「そぅしましょう」
 バイキングの人達のところにというのです。
「いいわね」
「わかりました」
 恵梨香は頷いてでした、そのうえで。
 皆と一緒にバイキングの人達のところに行きました、船長が最初にその人達に挨拶をしてお話をしました。
「やあ、久し振り」
「こちらこそ」
 バイキングの人達の中の恵梨香がバースに似ていると言った人がバイキングの人達を代表して応えます。
「元気そうだね」
「この通りだよ」
 船長はその人に陽気に笑って応えました。
「わしは元気だよ」
「それは何よりだよ。それはそうと」
 その人はここで恵梨香を見て言いました。
「この娘さんがわしを見てバースとか言ってたね」
「うん、この娘が知っている野球選手にあんたが似ているらしくてね」
「そうか、しかしわしはエリックだからな」
「バースじゃないな」
「そうだよ」
 このことを言うのでした。 
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