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黄金の羊

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第三章

「すぐやから」
「千キロがか?」
「モンスターも獣も出ますよ」
「今は何も見えなくても」
「出てきますし」
「というかこんなところを千キロ進むって」
「普通やないですよ」
 二人の言葉は抗議になっていた、しかし。
 ナツァグドルジは平気な顔のままであり二匹が言った方角に馬を進めた。それを見て二人も仕方なく。
 馬に乗って彼についていった、そして三時間程歩くと隣にちらりと野生の狼の群れが見えたがこの日は誰とも会わず。
 一行は夜は休んだ、ナツァグドルジが張ったゲルの中に入って休むがその中で黄は羊のすね肉を茹でたものを食べ馬乳を飲みつつ言った。
「今日人に会ってへんな」
「そやな」
 ナツァグドルジも馬乳を飲みつつ応えた、三人共同じものを飲んで食べている。狼と鹿も一緒にいる。
「モンスターとも遭遇してへんけどな」
「こんな国もあるんやな」
「これがモンゴルや」
「そういうことか」
「世界にはこうしたところもあるんや」
「見渡す限り大平原でか」
「人が少ないところもな」
 このこともというのだ。
「モンゴルや」
「それで人は殆ど遊牧民でか」
「ちょっと街があってな」
「底に人が集まってて」
「もう草原はや」
 つまり領土の殆どはというのだ。
「こんなのや」
「草原の海でか」
「そこを遊牧民達が馬や羊、犬達と一緒にな」
「移動しつつやな」
「暮らしてるんや」
「それが遊牧民やねんな」
「そして遊牧民の世界や」
 こう黄に話した。
「理解してくれとは言わんがな」
「知って欲しいか」
「そういうことや」
「街や農村とはちゃう世界もある」
 李も羊肉を食べている、そして馬乳を飲んで言うのだった。
「そういうことですね」
「教科書とかには出てるけどな」
「実感はです」
「なかったやろ、けどこんな世界もあるってことでそして今はな」
「このモンゴルで、ですね」
「神託適えるで」
「そのことはわかりました」
 神託のことはとだ、李は言ってだった。三人と二匹で夕食を食べてから寝た。そして日の出と共に朝食を食べ。
 ゲルを畳んで出発した、三人と二匹で進んでいくが。
 人と会うことは少なくモンスターも同じだった、だが三人は馬で果てしなく進んでいった。食料も水も持っているので問題ないが。 
 その道中について黄と李はこう言い続けていた。
「千キロ、遠過ぎる」
「一体何時着きます?」
「進んでも進んでも草原ばかりで」
「方向感覚が掴めません」
「方位磁石とか地図とか見ても」
「どうも場所が」
「ああ、今老夫婦は同じ場所に留まってるさかい」
 ナツァグドルジはその二人に話した。
「順調に進んでるで、そもそも一日普通に百キロ以上進んでるわ」
「馬に乗ってるから速い」
「そうやっていうんですか」
「そやからすぐやって言うたやろ」
 千キロの距離もというのだ。 
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