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女帝の厳しさ

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第二章

「それだとな」
「特にだよな」
「言うこともないか」
「国も街もよくなってるしな」
「ああ、ただそうしたことが好きなな」
 そうしたというのだ。
「人は困るだろうな」
「そうなるか」
「ああ、どうにもな」
 こうしたことを言うのだった、そしてだった。
 親父は若い客にソーセージを出した、そして若い客はそのソーセージを肴にビールをさらに飲んだ。
 別にいかがわしい遊びとさして縁がない者は困っていなかった、しかしそうではない者達はというと。
 やはり困っていた、それは宮廷に出入りする者達も同じで。
 ある貴族の者達はこっそりと高級娼婦達がいる娼館に入って遊んだ後でワインを飲みつつぼやいていた。
「こうした遊びをするにも」
「何かと大変ですな」
「特にこのウィーンでは」
「そうなりましたな」
「何しろです」
 ワインと香水、そして濃厚な退廃の香りの中でだ。彼等は話した。
「こうした店は即座にですからな」
「取り締まられるので」
「もう見付かればですからな」
「そうした風になったので」
「こうした遊びをするにも一苦労」
「そうなっていますな」
「いや、全く以て」
 貴族達はぼやきつつ語っていた、ワインを飲み嗅ぎ煙草の匂いもさせつつそのうえで話をしていく。
「健全たれとです」
「変にそうなっていて」
「愉しみが減っている」
「今はそうですな」
「あの方は」
 敬意を込めつつもどうかという声で言うのだった。
「こうした愉しみについては」
「どうにもですな」
「フランスとは全く違い」
「いや、あの国は最早です」
 オーストリアにとっては長年の宿敵であり今は手を結んでいるこの国はというと。
「楽園ですな」
「我々にとっては」
「快楽を愉しむ者達にとっては」
「何しろ国王ご自身がです」
 ルイ十五世だ、美男であると共にだ。
「寵妃をお持ちで」
「他にも多くのお相手の方がおられ」
「しかも鹿の園という美しい少女ばかりを集めた場所にも通っておられるとか」
「全く以て素晴らしいですな」
「我々にしてみれば」
「それに対して」
 ここで自分達を振り返っての話になった。
「我が国は」
「特にこのウィーンは」
「ワインは飲めても」
「音楽は楽しめても」
 それでもと言うのだった。
「快楽については」
「これがどうにも」
「ならなくなっていますな」
「我が国では」
「同じカトリックの国でも」 
 オーストリアとフランスは共にカトリックの国だ、だがそれでも長年に渡っていがみ合ってきてきたのだ。
「そこは違いますな」
「今の我が国は」
「あちらはといいますと」
 そのフランスはというと。
「国王陛下が代々ですからな」
「そう、女性がお好きで」
「かつてのフランソワ二世もそうで」
 ヴァロワ朝の頃の王である、かなりの好色であったのだ。 
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