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塩のない街

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第一章

               塩のない街
 ウォーレ=ビークとアニマル=ママニは今はビークの神託でナミビアのウィントフックに来ていた、だが。
 街に入ってだ、ビークはすぐに商店街の調味料の店を見て眉を顰めさせて店の親父に言った。
「おい、何でお塩ないんや」
「それがだよ」
 象人の親父はビークに不機嫌な顔で答えた。
「さっぱり入ってこないんだよ」
「お塩がか」
「ああ、残念だけれどこのウィントフックの傍には塩の鉱山とか塩湖とかなくてな」 
 塩を手に入れられる場所がというのだ。
「海辺とか他の地域から手に入れてるけれどな」
「そのお塩がか」
「それがないんだよ」
 一切というのだ。
「これがな」
「おかしな話やな」
「ほんまにな」
 ビークだけでなくママニも首を傾げさせて言った。
「これは」
「どういうことや」
「今この街の何処にも塩はないさ」
 親父も苦い顔で言った。
「だから塩味はソースとか漁礁とかな」
「そういうので手に入れてるんやな」
「人は塩がないとどうにもならないからな」
 生きていくことが出来ないこともだ、親父は二人に話した。
「塩分がな」
「それはな」
 その通りだとだ、ビークは腕を組んでカブト虫のその顔を真剣なものにさせて述べた。中背で痩せているが実によく引き締まった身体で。
「その通りやな」
「それでだよ」
「塩っ気はか」
「ソースとか漁礁とかでな」
「凌いでるか」
「ああ、ソースや漁礁があるだけましさ」
 見れば親父の店にもそうしたものが売っている、砂糖や酢、香辛料もあるがこちらはふんだんにある。
「けれどやっぱりな」
「お塩がないとやな」
「どうにもならないんだよ」
「それで街も困ってるんやな」
「最初は馬鹿みたいに高くなってな」
 その塩がというのだ。
「遂になくなったんだよ」
「やっぱりそうなるな」
「それが今だよ」
 塩が街から完全になくなったというのだ。
「残念ながらな」
「それでこの状況を何とかしたい」
「本当にな」
 親父はビークにぼやくばかりだった、そうして。
 ビークとママニが親父との話を終えるとすぐに都の太宰から貝殻で連絡が来た、それはビークの神託についてだった。
「今ウィントフックはお塩がないですね」
「ああ、全く」
 ビークは太宰に対して答えた。
「そんな状況でさあ」
「そうですね、それでなのですが」
「この件の解決をですね」
「お二人にお願いしたいです、それに」
 貝殻の向こうの太宰はビークにさらに話した。
「おそらくこの件は」
「おいらのですね」
「神託と思われますし」
「だからですね」
「お願いします」
 是非にという言葉だった。 
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