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金色に輝く女

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第三章

「何とかしなさい」
「毛染めっていうと」
「ブロンド様のがあるから」
「あの、私髪の毛は」
 どうかとだ、衣吹は母に返した。身体は風呂場から一旦出る時に拭いてバスタオルで包んでいる状態だ。
「染めないけれど」
「昔お姉ちゃんが染めてたでしょ」
「ええ、今は黒に戻してるけれどね」
「それがある筈だから」
 それでというのだ。
「手や足の毛を染めてね」
「ブロンドにっていうのね」
「そうしてね」 
 そのうえでというのだ。
「消しなさい、あんた毛黒いでしょ」
「ええ、そうよ」
「だったらね」
 母親だからこそ知っている返事だった。
「ここはね」
「手や足の毛をなのね」
「ブロンドにして」
「そうしてなの」
「見えない様にしなさい」
「それでいけるの?」
「ええ、だからね」
 それでというのだ。
「誤魔化しなさい、それで明日ね」
「クリームを買ってくれるのね」
「そうしておくから」
「私が買うけれど」
「お母さんも買うからいいわよ」
「今回は買ってくれるの」
「ええ、そうするから」
 それでというのだ。
「どっちにしろ明日日曜でしょ」
「ええ、ただ由香ちゃんお家に来るけれど」
「それでもね」
 今日はというのだ。
「明日休日だしね」
「それで誤魔化しておけっていうのね」
「そうしなさい、何なら休日だったら」
 それならというのだ。
「いっそのことそのままでいても」
「だから由香ちゃん来るから」
「身だしなみ整えておきたいの」
「女の子同士でも」
「いい心掛けね」
 母は娘のその想いを受け取ってこう返した。
「お友達でも家族でもよ」
「人前だとよね」
「身だしなみには気をつけないとね」
「じゃあさっきそのままでって言ったら」
「引っ掛けだったのよ」
 娘を試したのだというのだ。
「実はね」
「そうだったのね」
「すぐにそれは駄目って返してたわ」
「そうだったのね」
「ええ、けれど合格よ」
 衣吹の今の返答はというのだ。
「じゃあね」
「ええ、今からよね」
「毛を染めて」
 手や足のそれをというのだ。
「隠しなさい」
「そうするわね」
 衣吹も頷いてだ、彼女の姉が使っていたブロンドへの毛染めを自分の手足の毛に使って隠すことにした。
 そのうえで次の日に自宅に来る由香を待ったが。
 由香は玄関で出迎えてくれたタンクトップに半ズボン姿でメイクとセットもしている衣吹にだ、こう言った。
「どうしたの?」
「えっ、どうしたのって」
「今の衣吹ちゃんね」
 自分を出迎えた彼女はというのだ。
「何か光ってるわよ」
「そうなの?」
「何か手足が金色にね。後ろに灯りなくて」
 開けたドアから日差しが差し込んでいて明暗がはっきりしていた。夏の日差しと家の中はコントラストになっていたのだ。 
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