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ドリトル先生と姫路城のお姫様

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第六幕その八

「それでそなたの知恵を借りたいのじゃ」
「左様ですか、どの様な宴にするか」
「その知恵を借りたい、これまで色々な宴を催してきたが」
「今度の宴については」
「これまでの日本の趣ではないがこの城の美しさを活かしたな」
 その様にというのです。
「そうした宴をしたいのじゃ」
「それで僕にですね」
「知恵を借りたい、よいか」
「はい、お願いでしたら」
 先生はお願いされるとどうしても出来ないこと以外は断りません、それでお姫様にも答えるのでした。
「考えさせてもらいます」
「その時は褒美は弾むからのう」
「いえ、そうしたものは別に」
「ははは、無欲と聞いておったがその通りじゃな」
 お姫様は先生の今の返事に明るく笑って応えました、明るく笑っても気品と美しさは損なわれていません。
「よきこと。しかし何かしてもらって褒美を出すのも礼儀」
「礼儀だからですか」
「受け取ってもらうぞ」
 その時はというのです。
「是非な」
「そうですか、それでは」
「うむ、頼んだぞ」
「それでは」
「宜しく頼むぞ」
「それでは」
「しかし先生は見たところ」
 ここで先生のお顔をしっかりと見てです、お姫様はこうも言いました。
「非常によい相をしておるな」
「そうでしょうか」
「素晴らしい人格じゃな、しかもな」
 とてもいい人だけでないというのです。
「学問と友人に恵まれておる、伴侶もな」
「奥さんもですか」
「やがて素晴らしい者と結ばれるぞ」
「それはないですよ」
 先生はお姫様に言われても笑ってこう言いました。
「僕に結婚は」
「いやいや、顔に出ておるぞ」
「本当ですか?」
「そうじゃ、よく出ておる」
 実際にというのです。
「これはな」
「そうでしょうか」
「はい、本当に」
 まことにというのです。
「絶対にないですよ」
「いやいや、わらわが見たところな」
 お姫様は自分の見たものを笑ってないと言う先生にその奇麗な眉を顰めさせてどうかというお顔で言いました。
「そなたはな」
「良縁にもですか」
「恵まれておるぞ」
 そうだというのです。
「かなりな」
「そうでしょうか」
「そうじゃ、だからな」
 それでというのです。
「そのことも安心せよ」
「そうだといいのですか」
「先生の人徳はかなりじゃ」
 それ故にというのです。
「必ずな」
「奥さんもですか」
「かなりの者と結ばれるぞ」
「だといいのですが」
「僕達もそう思ってるから」
 チーチーも先生に言ってきます。
「絶対にってね」
「後は先生次第だよ」
「もうそれだけよ」
 チープサイトの家族もオシツオサレツの背中の上に並んで止まっているうえでそれで言うのでした。 
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