二人から四人へ
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第一章
二人から四人に
シベリアに伝わる古い話である。
ソドゥ=ソルドンチョ=ソルダヌィは兄のオルクトゥク=オルダンチャ=オルダヌィと二人で住んでいた。二人共大柄でしかもかなりの力の持ち主だった。
二人はシベリアの何処までも続く寒い大平原の中に二人で住んでいた、それこそ大地が出来てからであった。
二人で服を作って槍や弓矢も作った、これは二人のところによく風の神が風と共にやって来てどうすればいいかを全て教えてくれてのことだ。
二人は家に住み狩りをして暮らしていた、だがその二人のところに風の神が来てこんなことを言った。
「二人共ずっとここにいたいかい?」
「ここに?」
「ここにとは何だ」
二人は風の神に尋ねた、顔立ちは二人共濃い眉に引き締まった顔、黒く長い髪の毛とそっくりである。
その二人にだ、白い肌と髪の毛を持ちいつもシベリアの吹雪と共に来る風の神が語ったのだ。
「だからこの広い場所に二人でいたいかい?」
「そう言われてもな」
「我等はずっとここにいたからな」
「それで何処に行くか」
「そう言われてもだ」
二人には返答に困ることだった、お互いに顔を見合わせて話した。
「どうすればいいか」
「果たして」
「ならこの家を離れてだ、わしの様にだ」
風の神は二人にそれならと話した。
「あちこちを巡ってみればどうだ」
「そうすればいいのか」
「あんたの様に」
「着の思うままに何処かに行けばいいか」
「そうすればいいか」
「そうだ、腹が減れば狩りをしてだ」
二人が普段からしている様にというのだ。
「いいな」
「うむ、ではな」
「そうして旅をしていこう」
兄弟は風の神の言葉に頷いた、そうしてだった。
すぐに家を出て旅をはじめた、狩りは二人にとっては何でもないもので腹が減れば目にした獣や鳥、魚を捕まえてだった。
捌いて食った、シベリアの中を朝に起きて狩りをして食って水を飲み夜は寝た。そうしてだった。
長い旅を続けている時にソルダヌィは一時兄と離れ森の中で鹿を追っていた、すると彼の目の前にだった。
巨大な、大柄な彼よりも遥かに大きな姿とドス黒い肌に禍々しく光る眼をした男が現れた。ソルダヌィは男を見て彼に問い返した。
「御前は誰だ」
「この辺りを治めている神だ」
男はソルダヌィを見下ろして答えた。
「そしてこの森のものは全て私のものでだ」
「獲ってはいけないというのか」
「そうだ、何があってもだ」
こう言うのだった。
「獲ってはならん」
「待て、この世界の決まりではだ」
ソルダヌィは男の言葉に毅然として反論した。
「生きる為に必要なものならだ」
「獲っていいのか」
「そうだ、違うか」
「違うものか、この辺りは私のものと言えばだ」
「御前のものだというのか」
「そうだ、御前が何を言おうともだ」
「鹿を寄こさないというのか」
「決してな」
「馬鹿を言え、俺も生きないといけない」
ソルダヌィは槍を構えて男に反論した。
「鹿は獲らせてもらう」
「それは断じて出来ぬ、若し鹿を獲りたいならだ」
「御前を倒せというのか」
「そうしてみせろ」
「望むところだ」
ソルダヌィは自分が鹿を狩りその肉を食って生きる為にだった、男との闘いをはじめた。しかしだった。
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