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ある晴れた日に

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22部分:もう飛ぶまいこの蝶々その五


もう飛ぶまいこの蝶々その五

「確かに口は悪いところがあるけれど」
「かなり悪くないか?奴等」
「それでも。悪い娘達じゃないのよ」
「まあ根は悪くなさそうだな」
 それは何となくわかる正道だった。
「北乃達ともよくやってるしな」
「少年達とも親友になれるかしら」
「なれるんじゃないのか?」
 今度の返事はやや素っ気無い感じになってはいた。
「それもな」
「そう。なれるの」
「あの連中も悪い奴等じゃないだろ」
「ええ、それはわかってきたけれど」
「だったら大丈夫だよ。北乃な」
 ここで明日夢の名前を出す。
「いい奴だぜ」
「そうなの」
「俺あいつと塾が一緒だったんだよ」
「えっ、音橋君塾行ってたの?」
 今までで一番驚いた顔になっている未晴だった。
「嘘でしょ!?それって」
「何でそこで一番驚くんだよ」
「だって。そんな柄にはとても見えないし」
 驚いた顔のまままた正道に述べる。
「そうなの。少年と」
「そうだよ。まあどっちも成績はよくなかったがな」
「そうだったの」
 正道の今の告白には無意識のうちに笑みになってしまった未晴だった。空気が何処となくくだけたものになってしまったからだ。
「それでも。あいつな、面倒見がいいし」
「明るいしね」
「いつもベイスターズの帽子被って来てたんだよ」
「やっぱりそれなの」
「ああ。それであの調子さ」
「明るくて」
 もう明日夢のことはわかっているのだった。まだクラスがはじまって少ししか経っていないがそれでも彼女とは色々話をしているからである。
「元気がよくてね」
「身体は小さいんだけれどな」
 明日夢が小柄なことも話に出る。
「それでもな。やっぱりな」
「そうなの。ああした感じだったのね」
「変わらないんだよ、中一の頃から」
「ずっと小さくて」
「中身もな。けれどいい奴だぜ」
 このことは保障するのだった。
「絶対に信用していいぜ。無鉄砲なところもあるけれどな」
「ええ」
「飼育委員も向いてるだろうな」
「そうね。あの娘そういうの好きそうだし」
 未晴もこれはわかった。
「いけそうよね」
「いけないのは野本と俺か?」
 自分のことを話に出してついつい苦笑いになる。
「とりあえず何をするかはわかったけれどな」
「その通りにやっていけばいいから」
 そんな正道に対して優しい声をかける未晴だった。
「それでいいから。大丈夫よ」
「大丈夫か」
「ええ、絶対」
 太鼓判さえ押してみせた。
「二人でね」
「二人か」
「一人でやるつもりだったの?」
 目を少しきょとんとさせて正道に尋ねてきた。
「まさか」
「いや、それはまああれだけれどな」
「二人に決まってるじゃない」
 静かな笑顔をまた見た正道だった。
「それはね」
「二人か」
「そう、二人」
 またこのことを正道に告げるのだった。
「だて。園芸委員は二人でしょ」
「ああ、そうだけれどな」
「一人でやろうとしないで。二人でな」
「わかったさ。じゃあこれをやるには二人でな」
「やりましょう。今からね」
「今からか」
 こう言われた正道は少し微妙な顔を見せてきた。
「そうだよな。もうはじまってるんだよな」
「大したことじゃないけれどね」
「それでもはじまったんだな」
「そうよ。けれど特に肩肘張ることもないし」
「あっ、ああ」
 その言葉に頷いて自分の肩と肘を見る正道だった。そんな彼の動作を見て微笑む未晴だった。そしてそのうえで彼に言ってきた。
「そういうのじゃないから」
「リアルじゃなくてか」
「そう。心の話なんだけれど」
 未晴が言うのはそれだた。
「これはね」
「つまりリラックスしてやれってことか」
「そういうことよ。それに私もいるし」
「役に立てなくてもいいか?」
「そんなこと言わないの」
 今の言葉はすぐに否定された。
「二人いてだからね」
「じゃあ。春華達にぎゃんすか言われないようには頑張るな」
「御願いね。あっ」
 ここで未晴は突然声をあげた。
 
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