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ある晴れた日に

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177部分:輝けダイアモンドその十一


輝けダイアモンドその十一

「この書類にサインと印鑑を御願いします」
「印鑑?」
「拇印でもいいです」
 サービスがよかった。
「何でしたら印鑑も用意してありますが」
「印鑑も用意してあるんですか」
「はい。一つ三百円です」
 ここでも事務的であった。
「如何でしょうか」
「ええと、それなら」
 早速買おうとした。ところがここで未晴が出て来て言うのだった。
「ああ、安心して」
「安心してって?」
「サインは一人ですか?二人ですか?」
 今度は未晴が女の人に対して尋ねた。
「それで。何人ですか?」
「一人です」
 女の人の事務的な態度は未晴に対しても同じであった。
「それで拇印でも」
「印鑑でしたら持ってます」
 未晴はこう女の人に述べた。
「ですから」
「わかりました。それではサインと印鑑を御願いします」
「はい」
「おい、竹林」
「サインは誰のでもいいみたいだから」
 正道は未晴に対して自分がやるからいいと言おうとしたが未晴はそれより先に彼に対して話すのだった。この時の動きが結構以上に速かった。
「任せて。印鑑もあるし」
「あ、ああ」
「じゃあサインですね」
「ここに」
「わかりました。それじゃあ」
 正道を安心させるように言った後で女の人に応えながらサインと印鑑を済ませる。これで話は終わりであった。
「クラスはこのクラスですね」
「はい、一年G組です」
「八条中央高等学校一年G組」
 女の人は学校とクラスを復唱する。
「これで宜しいですね」
「はい、それで宜しく御願いします」
「わかりました」
 女の人ははっきりと答えてきた。
「それでは受理しました」
「はい」
「頑張って下さい」
 最後の言葉はにこりとしたものだった。これで話は終わりだった。こうして手続きを済ませた二人はその神殿を思わせる建物を出てさらに歩いた。向かう場所は今度は正道任せだった。
「それじゃあな」
「ええ」
「話も終わったしな」
 八条学園のその中を歩きながら未晴に話す。
「後はな」
「それよね」
「ああ、喫茶店な」
 正道にとってはようやくであった。
「行くよな、あんたも」
「ええ、よかったら」 
 未晴も既に喫茶店の話は聞いていたので気さくに答えたのだった。
「紹介して」
「いい店なんだよ」
 正道はにこりと笑ってまた未晴に話した。
「駅前にあってな」
「駅前にあるの」
「ああ。マスターが口髭を生やしててな」
 まずは店のマスターについて話した。
「穏やかな感じでそれでいてダンディな感じなんだよ」
「ふうん、そうなの」
「で、時々店の前にサイドカーが停まってるんだよ」
 彼はこのことも話した。
「それが目立つっていえば目立つな」
「サイドカーね」
「結構変わってるだろ」
「そう?サイドカーなら結構見るわよ」
 ところが未晴はこんなことを言ってきた。これは正道にとっては意外だった。
 
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