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ある晴れた日に

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165部分:共に生きその十五


共に生きその十五

「同性愛の話が歴史に残ってるなんてよ」
「昔の日本じゃ普通だったじゃない」
「それは俺も知ってるさ」
 正道もそれは知っていた。だから彼も自分自身はどう思っているかは別にして同性愛についてはあれこれ言ったりはしないのである。
「けれどな。それでもな」
「けれど同性愛でも浮気とか嫉妬とかはあるってことだね」
「そうだよな」
 これは正道自身が言い出したことなので頷いたのだった。
「それはな」
「だからさ。あの二人だって」
「危険なものはあるんだな」
「下手をしたらね」
 こう言う竹山であった。
「若しもだけれど」
「本当にそういう関係だったらか」
「まあただ仲がいいだけじゃないの?」
 竹山はこう思うのだった。
「幾ら何でも。そんなことは」
「まあ多分そうだな」
 何となくだが正道もそう感じていた。
「どっちもノーマルだろうな」
「この前のオリエンテーションでもやけにいちゃいちゃしていたけれどね」
「そもそも何時の間にあんなに仲良くなったんだ?」
 考えてみればそれも不思議な話であった。
「気付いたらだよな」
「そうだよね。結構東と西で別れてるし」
「それだな」
 三人と六人で今でもはっきりグループになっているのは間違いない。
「まあ北乃って結構女組に好かれる性格らしいからな」
「何でかな」
「はっきりとした性格だかららしいな」
 正道はある時クラスの中でちらりと聞いた言葉を述べた。
「何でもな」
「性格なんだ」
「あいつ性格とか悪くないだろ」
「そうだね。中森さんもだけれどね」
「北乃ってさっぱりした性格なんだよな」
 そして明るいのである。
「それに対して中森ってあれで結構迷ったりするからな」
「だから北乃さんに自分にないものを求めてなのかな」
「北乃が男っぽくて中森が女らしい」
「うん」
「何かこの歌舞伎まんまだな」
「ああ、そうだね」
 竹山はまた正道の言葉に頷くことになったのだった。
「そういえばね。この助六も揚巻も江戸歌舞伎じゃヒーローとヒロインの代表だしね」
「そんなに有名な歌舞伎なのかよ」
「十八番の中でも一番じゃないかな」
 竹山は述べた。
「暫とか勧進帳よりも上なんじゃないの?」
「暫に勧進帳!?」
 その二つの言葉を聞いて眉を顰めさせる正道だった。
 
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