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ある晴れた日に

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151部分:共に生きその一


共に生きその一

                     共に生き
 ゴールデンウィークが終わって暫くして皆はすぐに忙しくなった。演劇大会の準備である。
「それで皆」
 ホームルームの時間に教壇から千佳が皆に対して声をかける。その後ろには加山がいて彼は書記を務めている。
「その演劇の出し物だけれど」
「もう主役は決まってるのよね」
「ええ」
 千佳は咲の問いに答える。
「少年と凛ちゃんよね」
「そう、それはね」
「それはいいのよ」
 とりあえず主役はもうかなり前から決まっているのであった。ある意味非常にやりやすい。
「けれど問題はもう何をするかだけれど」
「演目何にする?」
「シェークスピアなんかどうかしら」
 静華がふと言ってきた。
「こういうののお決まりだけれどね」
「シェークスピア?」
「そうよ。結構あるじゃない」
 静華は千佳に続いてこう述べた。
「やるとしたら。ハムレットとかロミオとジュリエットとか」
「そうね。結構」
「渋いのだったらマクベスとかオセローとか」
「意外と知ってるのね」
「タイトル並べてるだけだけれどね」
 そこは自分で言う静華だった。
「そういうのね」
「シェークスピアねえ」
「悪くないわね」
 皆もそれで頷くのだった。確かにこういった演劇では非常によく使われるし実際に人気もある。演目としてはかなり妥当である。
「じゃあそれで行く?やっぱり」
「シェークスピア?」
「けれどさ」
 だがここで茜が言うのだった。
「明日夢と凛よね」
「ええ」
「そうだけれど」
「だったらシェークスピアちょっと難しくない?」
 考える顔でこう述べてきた。
「ちょっと」
「どうして?」
「だって。まず明日夢だけれど」
 茜は最初に明日夢を見て言うのだった。
「やっぱり。背が低いじゃない」
「まあそれはね」
「確かにね」
 今更言うまでもないことではあった。明日夢が小柄なのはもうわかっていることだ。
「それで凛だけれど」
「大きいっていうのね」
「けれどはっきり言って明日夢の方が男の子に見えるわよね」
「それもね」
「その通り」
 これもであった。
「つまり凛が女の子になるわけだけれど」
「ヒロインの方が大きいっていったら」
「やっぱり」
「それって問題でしょ」
 茜はそこを指摘するのだった。
「宝塚だって男役の人って背があるじゃない」
「あっ、そういえば」
「確かに」
 皆そのことにも気付くのだった。
「そうよね。男役の人の方が高いわよね」
「それも結構差があるみたいな」
「で、明日夢だけれど」
 ここで茜はまた明日夢を見る。
「凛と身長差があるから」
「十五センチ位?」
「あれ、十二センチじゃないの?」
 ここで意見が分かれた。
「少年、御前身長幾つだ?」
「一五七よ」
 こう坪本に答える。
「だから凛とは十二センチよ」
「マジか?」
「もっと低くない?」
「ねえ」
 皆明日夢のその言葉を聞いて顔を顰め合うのだった。
 
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