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ある晴れた日に

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147部分:妙なる調和その十九


妙なる調和その十九

「だから安心して食え。いいな」
「ああ、それじゃあな」
 何はともあれ正道もまたナポリタンを食べることができた。そのナポリタンを食べながら彼は一緒にビールも飲んだ。この組み合わせは皆と同じだった。
「それで音橋さ」
「何だ?」
 食べながら咲の言葉に顔を向けてきた。
「未晴と話したのよね」
「ああ、そうだぜ」
 咲のその問いにやはり食べながら答える。
「それはな。けれどそれがどうかしたのかよ」
「何かあったの?」
「何かって何がだよ」
「一緒にどっか行ったとかは」
「何でそんなのあるんだよ」
 彼の返事は実に素っ気無いものだった。
「そんなのよ。何もないぜ」
「何もないの」
「当たり前だろ?俺はただ音楽をやってただけだぜ」
 ここで脇に置いたギターのケースをコンコンと叩いてみせる。
「駅前でな。いつもみたいにな」
「そうだったの」
「そうだよ。別に変なことじゃないだろ?」
「まあね」
 咲もそのことには特におかしいとは思わなかったのだった。
「あんたのいつもの休日だしね」
「そうだよ。それでな」
「それで?」
「あいつに曲聴かせただけさ」
 このことも述べるのだった。
「ギターでな」
「それだけだったの」
「ああ。チェッカーズな」
 次に歌ったその歌手についても話す。
「それを歌ったんだよ」
「また随分とレトロだね」
 桐生はチェッカーズと聞いてこう述べてきた。
「チェッカーズって」
「竹林にも行ったけれどな、好きなんだよ」
「チェッカーズが?」
「それにフミヤさんがな」
 藤井フミヤについても言及してみせたのだった。
「好きなんだよ」
「だからなんだ」
「そういうことさ。何ならここでも奏でられるぜ」
「チェッカーズを!?」
「どんな曲がいいんだ?何でもいけるけれどな」
「何でもね」
「後期はちょっとあれだけれどな」
 やはりここでもチェッカーズ後期の曲については今一つといった顔を見せてきた。
「苦手なんだよな」
「御前あのビートが駄目なんだな」
「ああ、ちょっとな」
 野本の言葉に難しい顔で応えた。
「そうなんだよ。オープスとかアイハブアドリームとかな」
「俺もな。あの時のチェッカーズはな」
 野本もまた腕を組んで難しい顔になっていた。
「駄目だな。踊れないしな」
「ダンスでも無理か」
「大体バラードはダンスに向かないだろ」
 まずはそれだった。
「そもそもな」
「後期のチェッカーズはバラードじゃなくてもな」
「やっぱり違うんだよ」
 音楽の話になると実に真剣でキレもある野本だった。
「ああいう感じがな」
「そうだよな、本当にな」
「ああ。それでだ」
 さらに言う野本だった。
「何の曲歌ったんだ?」
「鳥になった少年の唄さ」
 やはりこのことも皆に答えた。
「それな。歌ったんだよ」
「それどんな曲なの?」
 静華は問う目で彼に尋ねた。
「鳥になった少年の唄って」
「ああ、バラードでな」
 音楽のジャンルについて述べた。
 
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