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何処まで攻めるのか

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第二章

「それからはどうすればいい」
「それからとはどういうことだ」
「君は先程金の軍勢は騎馬隊が強いと言ったな」
「北の者達だしな」
 かつての漢の頃の匈奴や唐の頃の突厥と同じくだ、とかく中華は北の馬に乗る夷敵達に悩まされてきた。
「だからこれまでやられっぱなしだった」
「そうだな」
「それがどうした」
「今金の都は燕京にある」
 梁は張にこのことを話した。
「燕雲十六州の北にな」
「そこまで攻め取ればいい」
 あっさりとだ、張は梁に答えた。
「違うか」
「そうだな、そうすれば金はかなりの勢力を失うな」
「では攻めるといいだけだ」
 燕京までというのだ。
「違うだろうか」
「だがそれで戦は終わりか」
 梁は真剣な声で張に問うた。
「果たして」
「金も都を奪われてはかたなしだ」
「それは我々漢人の考えだ」
「漢人のか」
「そうだ、あの国は女真だ」
 漢人ではなく、というのだ。
「女真は元々馬に乗って草原を羊と共に移り歩いて暮らしている」
「そしてその連中が戦では馬に乗って戦う」
「それが金の主力だ」
 あの国の軍のというのだ。
「遼もそうだったがな」
「それがどうしたというのだ」
「燕雲十六州まで奪い返し燕京まで手に入れる」
 そこまでして、というのだ。
「確かに漢人の多くも宋の民になるが」
「言っている言葉の意味が見えないが」
「だからだ、金の民は騎馬の民だ」
 羊を連れて移り歩いている者達だというのだ。
「その者達は燕京まで攻め落としても残っているな」
「それは」
 ここまで言われてだ、張もはっとなった、今しがた茶を飲もうとしたがその手が思わず止まってしまった。
「確かに」
「軍勢もそのままな」
「ではか」
「そうだ、燕京を攻め落としても金は残る」
「残ってだな」
「それからだ」 
 まさにというのだ。
「金は態勢を立て直してまた攻めてくるぞ」
「そうなるのか」
「ではだ」 
 梁は張にさらに話した。
「ここに至ると金を滅ぼすしかない」
「金をか」
「強勢な金をな」
「その様なことは無理だ」
 張は梁にとんでもないという口調で述べた。
「宋では」
「そうだな」
「あの国を完全に滅ぼすなぞ」
「遼にも出来なかったしな」
「あれは金の力を借りてやっと西に追いやった」
 当時金と宋は寮という共通の敵を持っていて協同してこの国を西に追いやったのだ、そして今はその二国がいがみ合っているのだ。
「まさにな」
「宋だけで出来たか」
 遼を西に追い出す、そのことをというのだ。
「果たして」
「それは」
「宋は実は金に攻められどうしようもなくなっていた遼にも苦戦していた」
 この時江南で乱がありそれを鎮圧した後であった、だがそれでも遼が今まさに金に敗れんとしていたことは事実だった。 
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