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不安が呼ぶもの

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第三章

「遥かに堅苦しいな」
「そうですよね」
「堅苦しく食べるとな」
「折角の美味しさもですね」
「何かちゃうな」
「ほな」
 アルフィアンはブッパースウォングにあらためて提案した。
「拠点は僕の家に置きますか」
「家の中は流石に自由やな」
「別に警官もいませんし」
 街のことで何かと目を光らせている存在はというのだ。
「使用人の人達がいますが」
「それでも自由やな」
「シンガポールでもお家の中は」
「そうか、ほなな」
「これからはですね」
「自分の家を拠点にしよか」
「それでは」
 アルフィアンも頷いて応えた、デザートはチョコレートのケーキだがそれを食べる時も堅苦しかった。
 そしてだ、食後に二人はシンガポールのアルフィアンの家に入ったがそこは確かに自由でブッパースウォングはこの街に来てはじめてくつろげた。
 それでアルフィアンも闊達に過ごしていたが。
 ここでだ、アルフィアンはブッパースウォングに話した。
「私としてはこちらの世界は」
「自由なとこにしたいな」
「そう思っていますが」
「リーさんはな」
「生真面目な方なので」
 それでと言うのだった。
「規律がです」
「起きた世界と同じか」
「シンガポールはこちらの世界でも太平洋の最重要地点の一つなので」
 交易の中心地である、だからこそ繁栄もしているのだ。
「ですから」
「規律よくせんとやな」
「駄目ということで」
「あの人はあえてか」
「シンガポールはです」
「十神連合の地域の中でもやな」
「特別に厳格な統治を続けています」
 起きた世界でのそれの様にというのだ。
「そういうことです」
「正しいけど困った話やな」
「太平洋、地下世界の中でも」
「特別厳しいさかいな」
「困ります」
 まことにと言うのだった。
「私の様に自由を好きな人は」
「どうしてもやな」
「ほんまに」
 二人でこうしたことを話してだ、そしてだった。
 アルフィアンとブッパースウォングは次の日も神託を探した、ギルドに入ってもみた。だがそれでもだった。
 中々見付からず三日程シンガポールの整っているが厳しい街の中を歩いた、そして三日目の夜にだった。
 二人で家の中でくつろいでウイスキーを飲んでいると市役所の方から貝殻で連絡が来た。それは市長からのものだった。彼はアルフィアン達が家にいることを知っていてそれで内密に連絡を入れてきたのだ。
「民事ですが厄介なことが起こっていまして」
「厄介な?」
「はい、ワン家のことですが」
「あのホテルの」
 シンガポールでも有名なホテルを経営している家である、種族は鼠人だ。
「あの家のことで」
「そうです、実は娘さんが家出をしまして」
「あの家は確かご子息が三人おられ」
「末に娘さんがおられますが」
「その娘さんが」
「何と家出をされて」
「ワン家から内密に何とかして欲しいと」
 アルフィアンは市長の言いたいことを察して言った。
「その様に」
「お願いが来ているのですが」
「それなら」
 すぐにだ、アルフィアンはこれが神託かと考えつつ市長に応えた。 
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