提督はBarにいる。
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艦娘とスイーツと提督と・37
~熊野:豚まん~
「提督、誤解されない様に言っておきますが私こういう類いのものはあまり好きでは無いのですよ?」
「はいはい」
「ただ、鈴谷が『美味しいから一度食べてみろ』としつこく言うから頼んでみただけであって、決して私(わたくし)の意思ではないという事を……」
「はいはい、御託は良いからさっさと食え」
「もうっ!ちゃんと話を聞いてくださいまし!」
「あのなぁ熊野。この『豚まん』もそうだが、こういう類いの料理は出来立てが一番美味いんだぞ?それをグダグダ話し込んで食べないで冷ましちまうのは、作った人への礼儀がなってないと俺は思うんだが?」
「う、うぐっ……それを言われると辛いですわ」
最近はSNSの発展で、料理が出てくるとやたらと写真を撮りたがる奴が居る。定食とかならまだしも、ラーメンみたいな麺類や寿司みたいな鮮度が命の料理をほったらかしにしとくのは、美味しく食べてもらおうと一生懸命作った人への冒涜だと俺は思うんだよ。
「一人前のレディのように振る舞いたいなら、そういう所から気を付けていかねぇとなぁ、熊野?」
「わ、わかっておりますわ!……ところで、お箸のような物はございませんの?」
「バッカお前、豚まんは手で持ってガブッと行くんだよ!」
「えぇ!?そ、そんなはしたない事出来ませんわ!」
「じゃあお前、好物のサンドイッチもナイフとフォーク使って食うのか?」
「いえ、サンドイッチは手で食べやすいように作られている料理ですもの。勿論手掴みで……ハッ!?」
「気付いたか、熊野。そうだ、豚まんも手掴みで食べるのがマナー。冬の寒い日なんかはその熱々の熱で暖を取りながら味わうのが流儀だ」
年がら年中常夏に近いブルネイじゃあ、その暖かさが仇になったりするけどな。だから熊野に豚まんをリクエストされた時に『北方海域からの帰りの時に作ってやる』と条件を付けたんだ。せめて寒い環境にいて、それから熱い料理を食った方が何倍も美味いだろうからな。
「そうですわね。マナーに従うのもレディの嗜み。では、遠慮なく……」
「あ、そうそう。豚まんは外側が冷めてても中身の餡が熱い場合が……」
「あ、あっつうううぅぅぅ!?」
思いっきりかぶりついたせいで、中の餡の熱さで軽く火傷しかけたらしい。熊野が床を転げ回っている。
「遅かったか」
全く、このポンコツお嬢様は……。
「まったくもう!中があんなに熱いのなら早く言ってくださいまし!危うく口の中が火傷する所でしたわ」
熊野は氷を入れた烏龍茶で口の中を冷やしつつぷんすこ怒っている。
「ははは、悪い悪い。でもどうだ?初めての豚まんは」
「食べ方に多少思う所はありますが、とっても美味だと思いますわ。鈴谷が言っていたのも納得です」
そう。何だかんだ言ってこのポンコツお嬢様、意外とジャンクフード好きなんだよな。ハンバーガーとかピザとかも、やれはしたないとかギャアギャア騒いでたが、今ではコッソリ一人で食べに出掛けているのを知っている。
「そりゃ何よりだ。んじゃ、俺も食うかね」
そう言って俺も豚まんを1つ手に取り、半分に割る。そして割った断面に辛子をたっぷりと付ける。
「あら提督、それは何を付けてますの?」
「これか?辛子だよ。豚まんはそのまま食っても良いが、こうやって辛子とかをお好みで付けて食うと……ん~っ!この鼻に来る辛味が肉の味を引き立ててなぁ!」
やっぱ豚まんには辛子だよ、辛子!その他にも色々付けて食うと味が変わって飽きが来ないんだよな。俺も一時期何を付けて食うのが美味いのか、研究した事がある。下にその時の個人的な感想を書いてみたいと思う。
※以下、提督……というより作者の個人的な感想です。批判は勘弁して(´;ω;`)※
《豚まんに辛子》
ド定番。大阪で有名な『551〇莱』で豚まんを買うと必ず付いてくるように、個人的にも凄く合うと思う。肉の味を引き立ててくれる上にほんのり甘い皮が苦手、という人も食べやすくなると思う。
《豚まん+辛子醤油》
これも割とメジャーな方かな?辛子を醤油で溶いて、そこに豚まんをちょんと付けて食べる。餡の塩気で物足りない場合は○。一応一口食べてみてから付けた方が良いとは思うが。
《豚まん+酢醤油》
餃子の感覚なのか、確かに餡はさっぱりして食べやすかった。ただ、皮が酢醤油を吸いすぎて酸味も塩辛さも強くなりすぎた。付けすぎ注意。
《豚まん+酢醤油+辛子》
これも酢醤油同様、付けすぎ注意。ただ、個人的にはただの酢醤油よりも食べやすい印象。
《豚まん+ソース》
えぇ……と最初は引いたものの、薦めてきた友人の『肉+粉ものにソースは鉄板だろ!?』の一言でチャレンジ。すると意外や意外、酢醤油よりも食べやすい印象だった。メンチカツサンドとかハンバーグサンドを食べてる感覚で普通に美味しかった。
《豚まん+ソース+辛子》
豚まん+ソースがイケるならこれもイケるだろ、と試したら大当たり。カツサンドにマスタードが合うように、豚まんにソースと辛子。試した事が無い人には一度やってみて欲しい。
「……とまぁ、ソースやタレを駆使して味変して食べるのも美味いぞ?」
「成る程、カツサンドと同じ様な組み合わせで……なら美味しくなるのも道理ですわね」
早速熊野はソースと辛子を付けて食っている。程よく冷めた事もあって、美味そうにがっついている。
「本当に、食べるように薦めてくれた鈴谷には感謝ですわね。また美味しい物を教えて頂きました」
「あぁ、そういやぁハンバーガーも鈴谷がきっかけだったか?」
「えぇ。鈴谷はなんというか、その……優雅なレディが食べるような物ではない……」
「ジャンクフード?」
「そう!それですわ。その『じゃんくふぅど』を沢山知っているのです。私がそう言う事に疎いので、色々教えてもらうのですわ」
そう言って熊野は嬉しそうに教えて貰った食べ物の数々を挙げていく。
「『はんばーがー』に、『ほっどどっぐ』に、『たこす』!まだまだ色々ありますわ……」
「食いしん坊なお嬢様だことで」
「あら、私が太っているとでも?」
「言ってねぇだろ?一言も」
「でも最近は、殿方と同棲を始めてしまったせいで、あまり一緒に出かけられなくなってしまって……少し淋しいのです」
「ま、男が出来たらそりゃあ女友達よりも男を選ぶ女の方が多いだろうな」
経験則というよりも、統計的に見ての話だが。
「まぁ、新しい交遊関係を作るいいきっかけじゃねぇのか?」
「そうですわね。私も改装して空母になった事ですし、他の空母の方々と仲良くなるのも良いかもしれませんね」
「おぉ、良いんじゃねぇの?」
「なら、是非とも私も『すたーばっくす』というお店に行ってみたいのです!そこにはとても美味しい飲み物があると伺っておりますの!」
「あ~……呪文みたいに長いドリンクの注文だったら止めとけ。頼むと後悔するかも知れん」
「????」
熊野は首を傾げている。まぁ、頼んで失敗しないと解らんか。
後書き
オチの会話の意味が解らない人は、『艦娘と提督とスイーツと・2』を読もう!(ダイマ)
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