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徒然草

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47部分:四十七.或人、清水へ


四十七.或人、清水へ

四十七.或人、清水へ
 ある方が清水寺に詣でられました。この方に一緒についてきたのは年老いた尼僧でしたがその人が道すがらくさめ、くさめと言い続けていました。それで奇妙に思ってどうしてそのように言い続けているのかと尋ねましても年老いた尼僧は返事をせずおかしなことを言うままでした。何度も尋ねたのですがすると尼僧の方も怒ってしまいまして五月蝿い、答えるのも面倒臭い、くしゃみをした時にこのおまじないとしていなければ死んでしまうと世間では言っているだろうが。自分が面倒を見た子が偉くなって比叡山延暦寺で学んでいる。その子が今くしゃみをしたのかも知れないと思うと気になって仕方がないからこうしておまじないをしているのだと言いました。
 これまた実に類稀な、殊勝な心を持った変わった人がいたものです。確かに非常に変わった尼僧でありますがそれでもそこにある心は極めて殊勝なものであります。自分が世話をしたその人のことを思うその気持ち、それがそのまま出ているものであります。この年老いた尼僧のようなことができる人はまあ滅多にいないでしょう。尊敬に値するものだと思います。風変わりではあってもそれでもしっかりとした正しい心を持っていてそれを実行に移しているならば、人はそれで充分過ぎる程であるのです。


或人、清水へ   完


                  2009・6・2
 
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