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徒然草

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140部分:百四十.身死して


百四十.身死して

                   百四十.身死して
 死んでそのうえで子孫に美田なりそうした様々な財産を残すといったことはまともな人のすることではありません。そもそもお金にしろ財産にしろ本来は実に下らないものであります。そうした下らないものを溜め込んでおくというのは恥でありますし高価なものに心を奪われるということそのものが情けないことであります。何よりも子孫にとって遺品が多いというのは実際のところ傍迷惑なものであります。私が貰っておこうと名乗り出る者が必ず現れてそのうえで醜い骨肉の争いが起こってしまうだけであります。死後に誰かに何かを譲ろうと考えているものがあるのならばそれは自分が生きているうちにあげればそれでいいことなのであります。
 従ってそもそも財産なぞ持たないに限ったことです。持ったとしても生きているうちに知っている人、家族や親戚でもそうですがそうした人にあげて後の憂いをなくすに越したことはありません。それが本当の知恵であります。日々を暮らしていくにあたって必要なものを持っているだけでいいのでありましてその他は何も持たない方がいいのであります。そうすればすっくりとして生きることができますし死んだ後も残された人達が醜い争いなぞして自分達も周りも嫌な思いをしなくて済みます。まことにそうあるべきなのでありますがやはり人とはわからないものでありまして世間ではそうした遺産を巡って醜い争いをしてしまう人が尽きません。そうしたことを見聞きする度にやはりこうしたことは慎むべきであり不必要なものを持つということそれ自体がよくないことであるのだと確信する次第であります。まことに嘆かわしいことでもあります。見ているだけでこう思うのですからその中にある人達は実に悲しいことになっているのです。


身死して   完


                 2009・10・1
 
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