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許されない罪、救われる心

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96部分:第九話 全てを壊されその五


第九話 全てを壊されその五

「親父の会社にも来るしよ」
「電話とかでもね」
「張り紙とかしてくるし」
 とにかくだ。四人の家族の学校や職場にまで来てそれでだ。岩清水は四人がやってきたことを喧伝しているのであった。
「どうなるの?お父さんが会社クビになったら」
「うちも。お母さんパート行かれなくなったし」
 ここで経済的な問題が加わっていた。
「もう。うちは」
「終わりよ、本当に」
「学校でもな」 
 長月も泣きそうな顔になっている。
「今みたいな状況だし」
「ネットでも私達のこと流れてるし」
「もう嫌・・・・・・」
 霜月が遂に涙を落とした。
「死にたい・・・・・・。こんな目に遭うなんて」
「うん・・・・・・」
 如月もだった。霜月のその言葉に頷いた。
「こんなのが一生続くんだったらずっと・・・・・・」
「せめて学校にはもう来たくないよ」
「うん、部屋にずっといたい」
「外に出たくねえ・・・・・・」
 四人はもう限界に達していた。周囲の糾弾は続いていた。その中でだ。岩清水はこんなことも言うのであった。
「悪事を行った人間は絶対に許してはいけないけれど」
「それで?」
「どうなの?」
「死んでからも許しちゃいけないんだ」
 皆に言うのであった。
「絶対にね」
「死んでからも」
「それからも」
「そう、それからもだよ」
 こう主張してまたしても煽る。
「例えお墓に入ってもそのお墓の前でね」
「そうだよな。悪い奴等は許したらいけないよな」
「そうよね」
「お葬式の場で宴会してやろうよ」
 あからさまに四人に対しての言葉だった。もうクラスの端でうずくまるだけしかできない四人を見ながら実際に話していた。
「死んだらそれを祝ってね」
「そうだよな。早く死ねよ」
「死んだら宴会してあげるからね」
「どうだよ、楽しみだろ!」
「さっさと死んだら!?」
「死んだ姿はネットで流してやるからな!」
 誰かが言った言葉にだ。岩清水が言った。
「ああ、自殺とかしたらその時の姿はね」
「そうだよな。撮ってネットで流したらな」
「いいわよね、それって」
 皆ここでまた岩清水に乗せられる。気付かないうちにだ。
「それじゃあその時はね」
「そうしてやるか」
 こんなことを四人に直接言うのだった。それを聞かされた四人は。
「そんな、死んでもって」
「死んでもそうされるの・・・・・・・」
「そんなの嫌だよ・・・・・・」
「許してよ・・・・・・」
 四人は死んでも救われないことがわかった。最後の最後の逃げ道もだ。これで完全に潰されてしまったのである。
 岩清水が煽る糾弾はこうしたものだった。殆どの人間がそれにおかしなものを感じてはいなかった。岩清水に感じさせられなかった。しかしである。
 葉月と弥生はだ。食堂で昼食を食べながら話していた。その時だった。
 葉月がだ。オムライスを食べながら弥生に言ってきたのだ。
「今の四人だけれどさ」
「どうしたの?」
「あまりにも酷くない?」
 こう弥生に問うた。
「ちょっとね」
「そういえば家族のところにも行ってるそうね」
「うん、そうなんだ」
「それって捕まらないの?」
 弥生はまずはこのことを不思議に思った。
 
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