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許されない罪、救われる心

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91部分:第八話 生徒集会その七


第八話 生徒集会その七

「何でここで映画なんだよ」
「まだ四人喋るんだろ?」
「それで何で?」
「誰が動かしてるんだよ」
 皆次々に言う。四人もだ。
「えっ、何?」
「何で幕が」
「どういうことよ、これ」
「私達まだ」
 四人も何故こんなことが起こっているのか理解不能だった。その中でもだ。何かが動いていた。そしてそれは止まらなかった。
 やがて何かが聞こえてきた。それは。
 四人がトイレで話していたことだ。この生徒集会での謝罪を決める時の話だ。
「おい、これって」
「ああ、あいつ等の声だよな」
「何でこんなのが放送されるの?」
「しかもこの内容って」
 四人が今の状況から逃げる為に謝罪するということを四人自身が話していることをそのまま放送していた。それを聞くとだった。
 皆はすぐに態度を変えた。そうしてであった。
「この連中それでか」
「糾弾から逃げる為に今あそこにいるのか」
「何て奴等なの」
「反省していないんだな」
「とんでもない奴等だな」
 こう言ってまたそれぞれ険しい目でその四人を見据える。四人もだ。
 壇上で狼狽してだ。あたふたとしていた。
「な、何であの時の話が」
「ここで流れるんだよ」
「どうして?あの時あのトイレには私達しかいなかったのに」
「どうしてなのよ」
 壇上で誰が見てもはっきりとわかる狼狽を見せていた。さらにだ。
 その幕に何かが映った。それは。
 四人が校舎裏で神無をいじめている時の映像が映ったのだった。
「お、おいあれ!」
「あの四人じゃない」
「それであれって椎葉さん?」
「うわ、酷いなこれ」
 四人で神無を殴り蹴ってだ。そのうえで彼女をゴミを入れる倉庫に蹴り込む場面まで映される。そしてそれだけに止まらなかった。
 四人がトイレで彼女をいじめていた場面も映される。弁当をトイレの床にぶちまけて無理に食わせる場面もモップで攻撃する場面もだ。当然殴ったり蹴ったりする場面も水をかける場面もだ。全て映された。
 しかもそのうえ教室や部室で神無のロッカーや机に落書きをしたり花瓶を置いたりゴミを入れる場面もだ。その時の醜い顔と合わせて映されていた。
 皆それを見てだ。まずは唖然となった。
「あいつ等ここまでやってたのかよ」
「何よこれ、酷過ぎるわよ」
「これが人間のすることかよ」
「最低」
「もう人間じゃないな」
「こんなことするなんて」
 その唖然としたものが怒りになるには然程時間がかからなかった。
 そしてだ。壇上で自分達の姿を見せられて呆然となる四人にだ。激しい罵倒を浴びせるのだった。
「死ね!」
「地獄に落ちろ!」
「もう二度と学校に来るな!」
「そこから消えろ!」
「何なら引き摺り下ろしてやるぞ!」
 何処からかものが飛んできた。それが最初だった。
 四人に罵声だけでなくものも浴びせられる。壇上に上がろうとする者達もいたが流石にそれは先生達が止めていた。
「おい、止めろ!」
「壇上に登るな!」
「落ち着け!」
「これが落ち着いていられるか!」
「こいつ等、許せねえ!」
 体育館のあちこちで騒動が起こっていた。
 最早どうしようもないまでに騒然となっていた。そしてだ。
 四人は蒼白になりただそこに立ちつくすだけになっていた。彼女達にはもう何もできなくなっていた。
「そんな・・・・・・」
「何でばれてたんだよ・・・・・・」
「見えないようにしていたのに・・・・・・」
「それに・・・・・・」
 目の前にある自分達への罵倒と激しい怒りはだ。四人をさらに追い詰めていた。
「も、もう・・・・・・」
「終わりだようち等・・・・・・」
 そしてその場にしゃがみ込んでしまった。へなへなと崩れ落ちる。もう彼女達には何もできなくなった。激しい糾弾と憎悪の中で。
 弥生もだ。顔を顰めさせて言った。
「もう無理ね」
「そうだね」
 葉月も冷たい声を出す。
「絶対に許せない」
「僕もだよ」
「ここまでしていたなんて」
「思ってた?」
「いいえ」
 弥生は葉月の言葉に首を横に振った。
「思ってなかったわ。とてもね」
「そうだよね。ここまで酷いなんてね」
「もう絶対に許さないわ」
 弥生は決めてしまった。
「あの四人がどうなっても知らないわ」
「うん。もう放っておこう」
「あそこまでやったら報いがあって当然よ」
 弥生は冷たく言い放った。
「どんな報いでもね」
「うん、僕もそう思うよ」
 葉月はまた弥生の言葉に同意した。
「自業自得だよ」
「本当にそうね」
 誰もが四人に激しい憎悪を向けていた。先生達も義務で生徒達を止めているだけだ。
 しかしその中でだ。一人だけ違っている者がいた。
「これでよしだね」
 岩清水だった。彼は体育館の放送の場から四人と糾弾の罵声を聞いてほくそ笑んでいた。そうしてそのうえで、であった。
 彼は一人その場を去った。四人はまだ糾弾を受けていた。遂にその場で泣き崩れたがそれでもだった。糾弾の声は止まらなかった。
「死ね!」
「泣いても許さないぞ!」
「地獄に落ちろ!」
 その罵声が止まることはなかった。体育館に何時までも響いていた。


第八話   完


                  2010・9・1
 
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