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許されない罪、救われる心

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54部分:第五話 エスカレートその十


第五話 エスカレートその十

「そんな訳ないでしょ」
「そうだよな、それはないよな」
「絶対にね」
「ないない」
 三人はここでも如月に続いた。
「若しあの娘にこれ以上近付いたら」
 無意識のうちに嫉妬を感じていた。その心のまま神無を罵る。
「こんなものじゃ済まないからね」
「人間の友達なんて持つんじゃねえよ」
「ゴミなのにね」
「偉そうなことするんじゃないわよ」
 最後はトイレの便器の水をわざわざ和風便器の水を出してそれをバケツですくって頭からかけてだ。そのうえでバケツを投げつけてから帰る。
 その時にだ。如月が倒れ崩れたままの彼女に告げた。
「掃除しておきなさいよ」
「ゴミがゴミ掃除かよ。それはいいな」
「そうよね」
「おあつらえ向きよね」
 また三人が続いてだ。そのうえでトイレを後にする。その後には動けなくなった神無が弁当だったものと一緒に倒れていた。
 これで終わりではなかった。翌朝また起こった。
 まず弥生と葉月が神無の机を見た。この朝は安心することができた。
「とりあえず落書きはないわね」
「ゴミもぶちまけられていないし」
 二人共それを見てまずは安心した。
「それじゃあ椎葉さん」
「大丈夫だよ」
「うん・・・・・・」
 神無は何とかといった感じで学校に来た。この日は朝から隣に弥生がいた。自分から離れるように言ってもだ。弥生は彼女を気遣ってそれで隣にいたのである。
「言ったわよね、友達だって」
「友達だから」
「そうよ、友達だからよ」
 だからだというのである。
「それに今の椎葉さんって」
「私が」
「目を離していられないわ」
 彼女を心から心配しての言葉だった。
「とてもね」
「とてもなの」
「本当に大丈夫なの?」
 俯き蒼白になった彼女の顔を見てだった。弥生は心から心配する顔で問うた。
「昨日よりもまだ顔色悪いけれど」
「何でもない」
「如月達に相談してみたら?」
 事実を知らないからこその言葉だった。だがその名前を聞いてだ。神無は無意識のうちにビクリ、となって震えてしまった。だが弥生はそれには気付かなかった。
「同じラクロス部よね」
「う、うん」
「あの娘だったら色々と相談に乗ってくれるわよ」
 これは弥生が知っている如月だった。
「だからね」
「そうなの」
「だから話してみたら?」
 何も知らないが故の言葉だった。
「それでね」
「いえ、それは」 
 当然ながらだ。神無にはそれはできない。青い顔で断る。
「無理だから」
「無理?」
「御免なさい、ちょっと」
「?何かあるの?」
 弥生は神無のその言葉に首を捻った。
「一体何が」
「いえ、別に」
「それじゃあ大丈夫なんじゃ?」
 やはり何も知らないまま言う。気付くこともない。
 
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