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琵琶湖の人魚

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第二章

 二人で船を停泊場に戻してそのうえで湖の中に入った、亀はその二人を騒動が起こっている村に案内した。
 村は江戸時代の趣が残っている昔ながらの村だった、家などに使われている木々は水で腐食しない様に加工したものだ。
 その村の中で人魚や魚人といった水中でも生活できる種族の者達が暮らしているがその暮らしぶりはというと。
「特に」
「おかしくないな」
「そうですよね」
 尾崎はその村と人々を見て吉川に答えた。
「これといってです」
「妙なものは感じないが」
「はい、一見ですが」 
 それでもとだ、亀は尾崎達に話した。
「これがなんですよ」
「実は違っていて」
「はい、詳しいことは村の村長さんに聞いて下さい」
「じゃあね」
 尾崎は亀の言葉に頷いてだった。
 そのうえで村の村長、老人の人魚達のところに吉川と共に行ったが。
 年老いた男の村長は皺だらけの顔をむっとさせて二人に答えた。
「近くにブラジルのアマゾンの人魚や魚人の人達が移住してきたんですが」
「そうですか」
 尾崎は素性を隠して通りすがりの冒険者として応えた。
「アマゾンからですか」
「はい、その人達ですが」
「何かありますか」
「いえ、生活習慣がです」
 それがというのだ。
「私達と全然違いまして」
「それで、ですか」
「もう出会えば何かと違うので」
「それで馬が合わないんですか」
「私共の村だけではないんですよ」
「もう何から何まで、ですか」
「違っているので」
 その為にというのだ。
「軋轢が絶えないんですよ」
「そしてそのことがですか」
「今琵琶湖の悩みの種です」
「そういうことですか」
「移住は許可を得ているそうで」
「政府からですね」
「お上から許しを得てならいいんですが」
 そのことはいいとだ、村の長老も話した。
「いや、鮒は食わなくてアロワナやピラルクの養殖をはじめて」
「アマゾンの魚ですね」
「しかもアマゾンの海草を植えたりするんで」
「琵琶湖で育ちますか」
「それが育つんですよ」
 そういった魚や植物達がというのだ。
「どれも」
「そうですか」
「それでなんですよ」
「そうした魚や植物がですね」
「琵琶湖に広まったら」
「大変ですね」
「これが一番不安なんですよ」
 こう尾崎達に言うのだった。
「アマゾンの魚って大きいのばかりですね」
「ピラルクは特に」
「そんなお魚が琵琶湖に広まったら」
「琵琶湖に昔からいる生きものはどんどん食べられたりしますね」
「植物もどうなるか、他にも暮らし方が全く違っていて」
 琵琶湖の彼等とは、というのだ。
「困ってます」
「それが琵琶湖全体で怒っている問題ですか」
「今は」
「近江の知事さんにはお話してますか」
「お役人さん達もどうかとなっていてです」
「動こうとしていますか」
「はい、ですが今の時点でです」
 役所が動く前だがというのだ。 
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