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許されない罪、救われる心

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38部分:第四話 岩清水健也その四


第四話 岩清水健也その四

「それでね」
「そうだね。何かおかしな気配がするよね」
「悪いことをしていると出て来るんだ」
 従兄はこんなふうにも話した。
「それでね」
「それじゃあ後は」
「証拠を掴むんだ」
 従兄の言葉がここで強いものになった。
「いいね、証拠をね」
「証拠をだね」
「盗聴器はもう用意してあるね」
「うん」
 岩清水の返答は即座だった。
「勿論だよ」
「あと隠しカメラは」
「用意してあるよ」
 それもだというのだ。かなり物騒な話になっている。
「もうね」
「よし、じゃあ後はわかるね」
「その連中を監視してね」
「証拠を掴むんだ」
 そうしろというのだった。
「わかったね」
「うん、それじゃあ」
「それからはわかるね」
 従兄の言葉が強いものになる。まるでやることなすこと全て頭の中に入っていてそれを確認し合うような。そうした感じであった。
「もう」
「わかるよ。僕もやるよ」
「前にも何度も経験あるし楽勝だと思うけれど」
「今度も徹底的にやってやるよ」
 彼は意気込んだ声で言い切った。
「絶対に許さないでね」
「そう、許したらいけないんだ」
「容赦なくね」
「そう、容赦なくだよね」
 このことも確認される。さながら死刑の方法を確認するかの様に。
「死ぬまで、いや」
「そう、死ぬまでじゃない」
「死んで墓場に落ちてからもだよね」
 それからだというのだ。二人は笑っていた。かなり酷薄な笑みであった。
「それからも」
「そう、悪党に墓場はいらないんだ」
 従兄の笑みに邪悪な歪んだものが入ってきていた。
「何もかもいらない」
「家族も幸せも何もかも」
「そういうものを全て徹底的に叩き潰してやるんだ」
「いつも通りね」
「そう、いつも通りね」
 酷薄なだけでなく邪悪なものがさらに増してきていた。
「そうするんだよね」
「その通り。君もわかってるね」
「わかるよ。お兄さんに教えてもらったから」
「よし、じゃあ見せてもらうよ」
「うん、見ていてね」
 彼等はその部屋の中で邪な笑顔を浮かべ合っていた。それはさながら悪鬼の集会の様子であった。何かが決定的に歪んでいるのだった。
 次の日。如月達は昨日とは違う顔になっていた。
 歪んだ顔でだ。教室の片隅でこそこそと話をしていた。
「今度は何してやる?」
「そうね、今度はね」
「またあれやってやろうよ」
 如月に対して文月と霜月が言っていた。
「あいつの机とロッカーにね」
「ゴミ入れてやろうよ」
「落書きもしてやろうぜ」
 長月も言ってきた。
「そろそろほとぼりも冷めてきたしな」
「そうよね。周りが忘れたその時によね」
 如月も長月のその言葉に頷いた。
「仕掛けるのが基本よね」
「だろ?だからここはな」
 長月は歪んだ笑みで如月のその言葉に応えた。
 
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