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足を洗った後で

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第四章

「見えやすいので」
「そのことを活かして」
「無論相手にもそうした種族がいます」 
 暗がり等他の種族では目が利きにくい状況でも見える、そうした目を持つ種族がというのだ。
「ですがそうした種族のならず者達にも」
「術を使いますね」
「はい、今度はです」
 まさにというのだ。
「睡眠の術を使い」
「眠らせますね」
「ヤクザ者程度なら」
 それこそとだ、鈴子は述べた。
「私達の術ならです」
「確実に効いて」
「眠りに落ちます、ヤクザ者はヤクザ者です」
「戦えない人を虐げ悪事を働くだけ」
「その程度です、モンスターと比べると」
 それも弱い部類のだ。
「何でもありません」
「まさにそうですね」
「強さはその程度、悪事を働くからです」
「厄介なだけですね」
「そうした人達が相手では」
「私達の実力では」
「何でもないです」 
 低級モンスター以下だというのだ。
「ですから」
「私達二人なら」
「無傷で。そして居酒屋のご主人の息子さんも」
「必ずですね」
「助け出せます、ですが」
 それでもとだ、鈴子は雅に暗い顔で話した。コボルトの犬の顔が急にそうなってそのうえで言うのだった。
「問題は」
「そうですね」
 雅は気付いた顔になって述べた。
「ヤクザ屋さん達はご主人のことを知っています」
「あの人達が息子さんに言っている」
「そのことはですね」
「有り得ます」
 まさにというのだ。
「それもかなりです」
「可能性は高いですね」
「息子さんに何故攫ったのか理由を述べることも」
 このこともというのだ。
「有り得るので」
「それ故に」
「その時どうするか」
「ご主人は息子さんに過去を知られたくない」
「ヤクザ屋さんだったことは」
「このことをどうするか」
「非常に問題ですね」
 二人でこのことについて難しい顔になって話した、このことを二人で話すが風呂の中では結論は出なかった。だが。
 それでもだ、鈴子は風呂を出て今度は共に部屋の中で浴衣姿になって酒を飲みつつだ。こう彼女に言った。
「私に考えが出ました」
「考えがですね」
「はい、それが出たので」
 だからだというのだ。
「それによってです」
「最も厄介な問題も」
「解決できます、過去は絶対ですが」
 どうしても変えられない、そうしたものであることは鈴子もわかっていた。それ故に人間の過去は恐ろしいのだ。 
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