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許されない罪、救われる心

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170部分:第十六話 向かうものその一


第十六話 向かうものその一

                第十六話  向かうもの
 如月は今はだ。自分の部屋にいた。そうしてである。
 元に戻ったベッドに座ってだ。そこから弥生に電話をかけていた。
 そうしてだ。彼女は言うのだった。
「明日だけれど」
「明日?」
「そう、明日」
 その明日だというのである。
「明日だけれどね」
「明日土曜だったわよね」
「ええ」
 こう弥生に対して答えた。
「そうよ」
「学校お休みよ」
「学校じゃなくてね」
「そこじゃないの?」
「別の場所に行きたいの」
 そうだというのだった。このことをだ。弥生に対して話すのだった。
「少しね」
「何処になの?」
「病院に」
 そこにだというのだ。
「病院にね。行こうって思ってるのよ」
「病院なの」
「私が入院していたその病院にね」
「ああ、あそこね」
「そう、あそこ」
 そこにだというのである。
「行こうと思ってるけれど」
「そう。じゃあ」
「一緒に来てくれるの?」
「当たり前じゃない」
 それは当然だとだ。弥生は答えた。
「それはね」
「有り難う」
 如月はその弥生に対して素直に礼を述べた。
「また一緒に来てくれるのね」
「当然よ。如月を一人になんてできないから」
 だからだというのがだ。弥生の言葉だった。
「一緒に行くわ」
「悪いわね、いつも」
「そうするわ。それでね」
「それで?」
「あの人達に会うのね」
「ええ」
 弥生の言葉にこくりと頷く。
「そうするわ。ただ」
「ただ?」
「いないわよね」
 如月の声に怯えるものが宿った。そのうえでの言葉だった。
「もう」
「岩清水君達ね」
「いないわよね」
「ええ、いないと思うわ」
 それは大丈夫だと答える。弥生には確証はなかった。しかしだった。今彼女はだ。如月をあえて安心させる為にこう言ったのである。
 そしてだ。彼はまた言うのだった。
「だから安心して」
「そう、安心していいのね」
「ええ、そうして」
 これが弥生の言葉だった。
「それに私もいるから」
「弥生・・・・・・」
「だから安心していいの」
 それでだというのだった。
「私もいるから。何があってもね」
「じゃあ私も」
「如月も?」
「いるわ」
 今度はだ。如月が弥生に言ったのである。
「絶対に」
「私の傍に」
「そう。今は私が助けてもらってるけれど」
 それでもだというのである。
 
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