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許されない罪、救われる心

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145部分:第十三話 贖罪その八


第十三話 贖罪その八

 家から玄関まで階段になっている。神無は弥生達の上にいる。そしてそこからだった。弥生と話をしてその話を聞いているのである。
 そしてだ。ここでまた話をするのだった。
「それじゃあ」
「この娘達の話聞いてくれるわよね」
「ええ」
 神無は弥生のその言葉にこくりと頷いた。
「それじゃあ」
「有り難う、じゃあ聞いてあげてね」
「うん」
 こうして玄関のところまで来てだ。玄関を挟んでそのうえで四人と向かい合った。そしてそのうえで彼女達の言葉を聞くのだった。
「お話って」
「あの」
 最初に言ったのは如月だった。
「椎葉さんがこの学校に来てからのことだけれど」
「その時からね」
「ずっと。酷いことしてた」
 如月が言った。
「むかつくから。そういう理由で」
「うちも」
「私も」
 長月と文月も言った。
「たったそれだけの理由で」
「酷いことしてた」
「けれど。自分がやられて」
 霜月だった。四人共俯いてしまっている。これまでの自分達のことを思い出してだ。それで俯いてしまっていたのだ。そうなってしまっていた。
「わかった」
「椎葉さんにしてきたこと」
 如月はこのことを話した。
「わかったから。私達もいじめられてきたのに」
「それがどんなに辛いのかわかってたのに」
「下らない理由で酷いことしてた」
「ずっと。椎葉さんを傷つけてきた」
 そしてだった。四人はゆkっくりと、だが深々と頭を下げた。そうしてだった。
「御免なさい・・・・・・」
「もう絶対にしない・・・・・・」
 こう告げたのだった。謝罪の言葉だった。そして。
 その場に崩れ落ちてしまった。そのまま泣き崩れる。四人共そうなっていた。
 弥生はその四人のところに来て彼女達の背を抱いた。そうしてそのうえで神無に顔を向けて言った。
「許せないかも知れないけれど」
 こう神無に言ったのである。
「けれど。この娘達もわかったから。だから」
「皆やつれたのね」
 神無はその崩れ落ちる彼女達を見て言った。
「顔も髪の毛も荒れて」
「うん、それは」
 弥生が答える。泣き崩れてしまって何も言えなくなってしまった四人にかわって。
「辛かったから」
「城崎さん達も辛かったのね」
「そうなの。それは見てきたわよね」
「あの時はざまみろって思った」
 四人が岩清水達に糾弾されていたその時のことだ。その時を彼女も見ていたのだ。
「けれど今は」
「違うの?」
「私が受けていたのと同じだったのね」
「そうね。それは」
「同じ・・・・・・それに」
「それに?」
「言葉、聞いたから」
 四人を見ながらの言葉だった。
「だから」
「だから?」
「いいよ」
 こう言ったのだった。
「もうこれで」
「この娘達、許してくれるのね」
「・・・・・・・・・」
 無言だった。だが、だ。確かに首を縦に振った。それが何よりの証拠だった。
「忘れることはできないけれど。いいわ」
「有り難う・・・・・・」
 弥生もだった。自然に涙を流していた。
「この娘達を許してくれて」
「うん・・・・・・」
 神無は今度は声を出して頷いてみせた。そうしてだった。
 まずはだ。弥生に言った。
「私ね」
「ええ」
「本当にずっと辛かった」
 このことはだ。言わずにはいられなかった。
「それでも。他の人が。私をいじめていた相手でも」
「如月達も?」
「ええ。辛い目に遭うのは駄目だと思うの」
 こう言うのだった。
 
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