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許されない罪、救われる心

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141部分:第十三話 贖罪その四


第十三話 贖罪その四

「思い出したし」
「有り難う・・・・・・」
「そうしてくれて」
 三人はその言葉だけで泣きそうになった。
「おかげで私達」
「今こうして」
「嬉しい・・・・・・」
 この言葉も出た。言ったのは霜月だ。
「まだ。友達って思ってくれていて」
「来てくれて」
「それで話も聞いてくれて」
「それでね」
 弥生はその泣きそうになっている三人にまた言った。
「いい?」
「え、ええ」
「それでどうしたの?」
「これからだけれど」
 話を変えてきた。自然にだ。
「三人共辛かったわよね」
「うん・・・・・・」
「それは」
 その話がされるとだった。三人の顔はまた俯いたのだった。
「もうこんな思いしたくない」
「する位なら本当に」
「生まれなかったらよかった」
「他の人をいじめたら」
 弥生が話すのはこのことだった。
「どうなるか。わかったわよね」
「ええ・・・・・・」
「死んでも許してもらえないなんてなって」
「だから・・・・・・」
 また泣きそうな顔になる三人だった。岩清水に見つかってからこれまで受けてきた仕打ちの中でだ。そのことがわかったのである。 
 それでだ。今言うのだった。
「こんな思いもうしたくない」
「本当に」
「そうよね。だからね」
 弥生は三人にまた言った。
「謝りに行こう」
「あの娘のところに」
「そこになのね」
「行けなかったらいいけれど」
 深く傷ついている三人のことはわかっていた。だから。無理強いはしなかった。
「それでもね。どうかしら」
「ねえ」
 今度は如月が三人に言ってきた。
「三人共悪いと思ってるわよね」
「うん・・・・・・」
「それは」
「やっぱり」
 目を伏せていた。だが言葉は出した。
「自分がここまでやられてわかった」
「こんなに痛いんだって」
「それで辛いんだって」
「だからね。もうこんなことは止めよう」
 切実な言葉だった。それで三人に話す。
「絶対に。だから」
「あの娘のところに」
「それでなのね」
「謝りに」
「そうしよう」
 如月はまた三人に話した。
「私達。悪いことしたから」
「無闇に謝罪を求める人も世の中にはいるけれど」
 そうした輩に限って自分は謝罪しないものである。これまた世の中の奇怪な摂理である。挙句には責任転嫁や自己弁護に走るのだ。己のことには。
 しかし弥生はそうした人間ではない。だからこそ説得力があった。
「私、それはしないから」
「そうなの」
「だから」
「それで」
「そう、どうかしら」
 弥生は三人に言っていく。
「それで」
「少し待って」
 文月が言ってきた。
「決めるのは」
「ええ、わかったわ」
 弥生は文月のその言葉に頷いた。
 
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