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許されない罪、救われる心

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109部分:第十話 襲撃の後でその八


第十話 襲撃の後でその八

「それで聞きたいの」
「そうなの」
「やっぱり許せない?」
 神無のその目を見て問う。
「如月のことは」
「怖かった」
 神無の返答はここからだった。
「あの時は」
「そうだったの」
「死にたかったわ。学校に来るのが嫌で仕方がなかったわ」
「やっぱり。それじゃあ」
「けれど今村さんがいてくれて」
 弥生を見て彼女の姓を出す。
「それでラクロス部に部長がいてくれたから」
「どうだったの?」
「助かった。けれど今のあの娘達って」
「ええ、誰もいないわ」
 弥生は俯いて答えた。
「家族の人も。皆引き裂かれて」
「私も家族はずっといてくれたわ」
「だから救われていたのに」
「特に兄さんが」
 兄のことを自然に話に出す。
「いつも私によくしてくれるの」
「そう。お兄さんもいてくれたの」
「けれどあの娘達にはなのね」
「あの時私は絶交したわよね」
 弥生はあの屋上の時を思い出していた。その時如月の頬を平手打ちにしてそのうえでだ。絶交を言い渡したのである。その時のことをだ。
「それから。御家族も」
「聞いてるわ。岩清水君が」
「お家の人達も巻き込んで動いているから」
 岩清水はそこまでしていた。そうして四人を追い詰めていっているのだ。
「だから。それで」
「御家族の人達にも迷惑がかかってるそうだけれど」
「ネットで住所や電話番号公開されてるから」
 弥生はこのことも知っていた。
「それで家の前に人が集まっていて」
「私よりずっと酷いことになってるのね」
「自業自得だけれど」
 弥生はこうも思っていたのは事実だった。
「けれどね。それでも」
「酷過ぎるわよね」
「そう思うの?」
「私には今村さんに部長に家族がいてくれたから」
 またこのことを話す神無だった。
「何とか救われたの」
「私も」
「正直最初はざまをみろって思ったわ」
 神無は弥生に本音も話した。
「それでも。今は」
「思ってないのね」
「おかしいと思う」
 俯いてこう述べた。
「今の岩清水君達は。ちょっと」
「そうなの。それじゃあ私」
「どうするの?」
「如月のところに行って来るつもりなの」
 そうするというのである。
「あの娘のお家に」
「そうするのね」
「だから。絶交したけれど」 
 それでもだというのだった。
「友達だから」
「友達だから」
「如月。ずっと酷い目に遭っていて。そりゃ当然自業自得よ」
 このことは認める。自分でもだ。
「けれどそれでもね」
「友達は。どうしても」
「そう。私あの娘に死んで欲しくない」
 弥生の偽らざる本音だった。
 
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