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真の学者

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第五章

「事実はわかるんや、というかや」
「というか?」
「祖父ちゃんも生きててな」
 そしてというのだ。
「当時の日本軍におった人一杯おるねんぞ」
「その人達に聞いたら」
「すぐにわかることや」
 真実、それがというのだ。
「けれどや」
「そうしたことを一切せえへんで」
「言ってるって学者か」 
 まさにその組織にいた生き証人が多くいたがというのだ。
「そもそもこの話いきなり出たみたいやな」
「いきなりなん」
「何で戦争終わってずっと言われてなかったんや」
「大勢の女の人攫ったみたいな話が」
「それもおかしいやろ」
「言われてみたら」
「そんなおかしい話はな」
 それこそというのだ。
「勉強出来んわしもわかるわ」
 それこそというのだ。
「何でそれがええ大学で教えてる先生がわからんねん」
「何でやろ」
「学者って学問をするやろ」
「うん、ちゃんと勉強して調べて」
「それせんで何が学者や」
 北村は娘に怒った顔で話した。
「わし等の仕事かてや」
「ちゃんとせんとやね」
「えらいことになるわ、そんなまともに調べんで勉強せんでや」
「人に偉そうなこと言っても」
「そんなん学者やない」
「ほな何やろ」
「偽や」
 それだというのだ。
「そうでしかないわ」
「偽やねんな」
「偽物やないとそんなん言うか」
 まともに調べず学ばずに少し調べればわかる様なことを間違えて堂々と言うことなぞないというのだ。
「そんな奴の言うことは聞いても意味ないわ」
「そやねんな」
「間違っててわかってて言うてたらな」
「その場合もあるねんな」
「余計にあかん、そこに共産主義とかのイデオロギーがあっても」
 それに関わるものであってもというのだ。
「学者はほんまのことを調べてそれでそのほんまのことを世に言うものやろ」
「それをイデオロギーでせんと」
「あかん、それはな」
 それこそというのだ。
「学者のすることやない」
「曲学阿世なん」
「そや、文字通りのな」
 まさにというのだ。
「それや、今の日本でよおさんの学者が慰安婦があると言うてるみたいやが」
「調べてすぐにわかるのに」
「その学者は全部偽や」
「今の日本ほんまの学者少ないねんな」
「そや、今の日本普通の仕事はまともな奴が多いみたいやが」
「学者はやねんな」
「どれだけあかんか、そやから北朝鮮に宗教があるとかな」
 愛衣が中学三年に言った時の言葉をそのまま言った。
「言うんや、今の日本の学者は偽物ばっかりや」
「それえらいことやね」
「ああ、勉強が全然出来んわしにも小学校卒業しただけの親父にも言われる」
 そのことがというのだ。
「ほんまにな」
「そんな学者ばかりの今の日本は」
「とんでもない状況や」
 こう言いつつだ、北村は休日なのでまたビールを飲んだ、しかしここで愛衣の母であり彼の妻である彼女から痛風になることを注意された。だがそれでも愛衣は大切なことがわかったと思った。
 以後彼女は妙に思ったことは自分で調べて学ぶことにした、学者と言われる人達の言うことを真に受けずに。その結果大学を優秀な成績で卒業し大学院に進み博士号まで得て若くして海外で優れた学者として評価される様になった。真の意味での学者であると。


真の学者   完


                  2018・9・16 
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