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騙される者

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第六章

「酷いからな」
「日刊キムダイは左翼でな」
「夕刊キムは保守らしいがな」
「どっちもどっちだな」
「ああ、下劣だよ」
 山村はこの二紙を一言で表現した。
「下劣で誇りも何もないな」
「まさにタブロイド紙だな」
「日本のハーストだよ」
 アメリカの有名な新聞社、出版社だ。新聞を売る為なら戦争を引き起こすことさえ躊躇しないと言われており人種差別的な記事で知られている。質の悪いジャーナリズムをイエロージャーナリズムと呼ぶかそれはこの会社の新聞の紙の色が黄色だったことから来ている言葉だ。
「まさにな」
「そうだな、そしてだな」
「連中を煽っているのはか」
「その夕刊キムだったか」
「イエロージャーナリズムが煽ってたんだ」
「それはあれだな」 
 門倉は厳しい顔で述べた。
「大戦までのアメリカと同じだ」
「あの時のアメリカもだったな」
「ああ、何故戦争に至ったか」
「アメリカの対日感情が酷くなっていたせいだったな」
「それはハーストがかなり煽ったんだ」
 その部分が大きかったと言われている、元々あった黄禍論をハーストが煽情的かつ差別的な記事で煽りに煽ったのだ。
「そうしてな」
「アメリカの対日感情が悪化してな」
「戦争に至った面がある」
「そうだったな」
 山村も頷いて応えた。
「俺もその話は知ってるさ」
「それでアメリカ社会は日系人を迫害してな」
「排日移民法もあったな」
「大戦中の日系人収容所もな」
「ハーストが大きく影響してるな」
「煽られた連中が馬鹿を言って馬鹿をやったんだ」
 その結果だというのだ。
「それでその連中は今どう言われてる」
「差別主義者だ」
 山村はまたしても一言で表現した。
「汚らしいな」
「醜悪な差別主義者と言われているな」
「全員な」
「そうなってるな」
「ハースト社は今もあるがな」
「今も批判され続けてるな」
「人種差別を根拠なしに煽ったとしてな」 
 ハーストのした過去は実際にジャーナリズム史の汚点とされている、差別記事やイエロージャーナリズムのサンプルとさえなっている。
「批判されてるな」
「そうだな、そしてな」
「今の日本でもか」
「夕刊キムがだよ」
 まさにこのタブロイド紙がというのだ。
「それをやってるんだよ」
「そうなんだな」
「ああ、休暇再編じゃ権力者の靴の裏を舐めてな」
「今度は馬鹿を煽ってるんだな」
「そうなる、本当にな」
 門倉も忌々し気に言った。
「ふざけた話だな」
「御前もそう思うな」
「ああ、性根の腐りきった話だよ」
「煽られてる連中は夕刊キムのこと知らないな」
「球界再編の時とかの記事をか」
「ああ、知らないな」
「御前は知ってるから信じないだろ」
 門倉はこう山村に返した。
「そうだろ」
「ああ、そうだよ」 
 その通りだとだ、山村は答えた。
「だから今言ってるんだよ」
「球界再編で痛い目見たからか」
「連中の記事にはな、だからな」
「御前は騙されないな、連中の正体を知ってるからな」
「そうだよ、けれどネットの連中はか」
「そんなの知らないか興味ないかだよ」
 それこそというのだ。 
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