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戦国異伝供書

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第十五話 中を見るとその九

「そういうものもあるか」
「興味が出たか」
「少しな、ではな」
 それならと言うのだった。
「これからな」
「時間があればか」
「堺に行ってじゃ」
 そうしてというのだ。
「そうしたものを食するか」
「それで酒もじゃな」
「飲んでみるか」
 その葡萄の酒もというのだ。
「今度な」
「そうせよ、わしもじゃ」
「飲むか」
「そうするわ」
 是非にと言うのだった。
「米の酒もよいがな」
「葡萄の酒もじゃな」
「興味があるわ、ただ色がな」
「ああ、赤だけではなくな」
「白もあるそうじゃな」
「それはまことか」
 この話もするのだった。
「葡萄は赤いがのう」
「白い葡萄の酒もあるのか」
「面妖な話じゃ」
「全くじゃな」
 二人でこんな話もして飲んだ、そのうえでまた戦になる時を待っていた。そんな中で岐阜の信長にフロイスが葡萄の酒を献上したが。
 その酒を見てだ、信長は笑って言った。
「その酒はお主が飲め」
「私がですか」
「わしが飲めぬことは知っておろう」
 酒はというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「そうじゃ、酒はよいわ」
「南蛮の珍しい酒ですが」
「日本ではそうじゃな」
「日本の酒とは違います」
 このことを強く言うのだった。
「この酒は」
「葡萄で造っておるな」
「そうです、日本の酒も美味しいですが」
「その酒もか」
「また違う美味しさがあります」
 そうだというのだ。
「ですからと思い献上しましたが」
「それはわかるがわしは酒はじゃ」
「どうしてもですか」
「少し飲んで己がわからなくなってじゃ」
 やはり笑って言う信長だった。
「それでじゃ」
「次の日の朝にですか」
「頭が痛くなって仕方なくなる」
 二日酔い、それにも苦しめられるからというのだ。
「ですから」
「このお酒もですか」
「よい、お主達だけで飲め」
「それでは」
「しかしこの度も色々持って来てくれたのう」
 献上品は酒だけではなかった、他の南蛮舶来の多くの品があった。信長はそれ等も見て言うのだった。
「実にな」
「はい、戦のご苦労を聞きまして」
「それでか」
「お気持ちを和やかにと思いまして」
 そうなって欲しいと思ってというのだ。
「それで、です」
「持って来てくれたか」
「左様です」
「礼を言うぞ、ではな」
「酒以外のものはですね」
「受け取らせてもらう、しかしフロイスよ」
 あらためてだ、信長はフロイスに問うた。 
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