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真ソードアート・オンライン もう一つの英雄譚

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幕間の物語
  運命の出逢い

 
前書き
ハーメルンの夕凪楓さんとのコラボ作品です!
ぜひ最後までお楽しみください! 

 
「お泊まり会?」
「サチとケイタが皆んなの息抜きの為にやるんだって!行こうよアヤト!」

コハルが楽しそうに言う。お泊まり会か……何だかんだやった事なかったからやってみたいかも。
俺はコハルの意見に賛成して早速11層タフトの街に繰り出した。

「やぁ来たね!アヤト!コハル!」
「いらっしゃい。キリト達はもう来てるよ」
「おう、お邪魔します」

俺たちは家の中に入るとキリトにアスナ、リズベット、シリカ、ミスト、クラインがホールに集まっていた。

「お、来たな」
「コハル!アヤト君!待ってたよ!」
「全く、遅かったんじゃない?」
「リズさん!」
「冗談よ!冗談!」
「アヤト君!こんばんは!」

エギルは店番ので来れないそうだ。ちょっと残念だが、エギルの分も楽しもうと思った。

「アヤト達も来たし、飯にしようか!」
「おう!宴だ宴!酒持ってこーい!」
「お前以外未成年だ……」

アスナとミスト、サチにケイタが厨房に料理を取りに行った。

「あ!私も手伝うよ!」

コハルも四人を追って厨房に入る。直ぐに料理が運ばれて来て、宴が始まった。キリト、俺、ケイタで大した話はしてはいないが、それでもやはり

「ほんと、みんなで食べるといつもよりもっと美味しくなるの凄いよなぁ」
「そうだよな。俺も詳しくは分からないけど、人間の脳に何かあるんじゃないか?」
「脳?」
「気分の高揚で、脳があらゆるものがプラスの思考になってるんだよ」
「へーまぁ例え錯覚だとしてもいいもんだよな。現実世界に戻ってもまたこうやって集まれればな……」
「集まれるさ。ここでの繋がりは消えない。だろ?」
「そうだな」
「そうだね」

ケイタは安心した様に笑ってみせる。それから2時間程して宴は終わり、ちょっとしたゲーム大会をして男女で別れて部屋に入って布団の中に入る。

「この感覚懐かしいぜ。大学の合宿以来だ」
「修学旅行気分だよね」
「だよな!よっし、お前ら!今日のメンツの中で好きな女子を言っていけ!」
「中学生か!俺はパスだからな」
「俺もパス」

俺とキリトが降りるとクラインはニヤリと笑う。

「あ、じゃあ俺はアスナさんとコハルちゃんかなぁ!二人とも優しいし、何たって可愛いからな!」
「「おい(威圧)」」
「じょ、冗談だ!そんなに怒るなよ……」
「「怒ってない」」

俺とキリトはほぼ同時に反論する。

「クラインさん。その二人はアヤトとキリトの担当なんだからあんまり揶揄っちゃダメですよ」
「それもそうだな。ふぁ……なんだか眠くなって来たぜ。そんじゃおやすみ」

直ぐにクラインから寝息が聞こえてきた。俺たちは顔を見合わせると、もう少し話をする事にした。

「僕さ、今も二人には感謝しているんだよね」
「突然どうしたんだよ?」
「《スケルトン・ヴィシャス・レックス》からドロップするインゴットを求めて僕とアヤト以外の黒猫団のメンバーで取りに行っただろ?あの時二人が居なかったら多分全滅してた。キリトがいなければサチは死んでたと思うし、アヤトが僕を止めてなかったら僕はサチを置いて死んでたと思う」

しみじみとする俺たち。あの出来事は俺たちの中に刻まれている。誰もが苦しんで後悔した。でも、俺たちは前に進まなければならない。死んでしまった彼らの分まで生き延びる。それが今の俺たちが出来る事なのだから。

「ああ。俺たちは必ず最後まで生き残ろう。ササマルもテツオもダッカーもそれを望んでいる筈だろうからな」
「アヤトの言う通りだ。ふぁ〜……悪い。俺も寝るわ」
「じゃあ僕たちも寝ようか」
「そうだな」

俺たちは布団を被って寝る態勢に入る。直ぐに意識が遠のいていく。












────夢を見た
















────夢を見た


















────自分ではない誰かの夢を見た
















────雪の中、一人の少年の夢を見た





















少年は真っ白なコートを着ている何処と無くキリトに雰囲気が似ていた。
いや、それ以上にその少年は異様だった。
吹雪の中で少年の焦点は合わず、片腕も無く、座り込んで只々狂ったように笑っている。
笑っているのに、口角は上がって笑顔なのに、その目からは涙が溢れ出ていた。



胸が痛い。
少年を見ていると何故だか自分自身の心も締め付けられる様だ。



放って置けない。
俺は彼を放って置けなかった。



俺は彼の元に足を踏み出そうとする。が、足が動かない。何度足を前に出そうとしても動かない。
すると、一つの足音が聞こえてきた。あれは、キリト……?

俺は手を前に出して────

「キリト────!」















「────は!」

俺は勢いよく起き上がる。不意に胸に手を当てると、鼓動が早い。シャツは汗でびっしょりと濡れており少し気持ち悪い。俺は荒い呼吸を整える。外は明るくなってきており、他の3人はまだ眠っているみたいだ。

「夢……か」

何ともリアルな夢だ。雪の中を歩く感覚、吹雪く風と雪の感覚はとても夢とは思えない程だ。

「なんなんだ……この感覚は……」

俺は布団から出る。少し外の風に当たろう。メニュー欄を操作して汗で濡れた服を取り替える。
俺は武器以外の普段の格好になると、外に出た。
朝霜と霧が濃くてあまり景色は楽しめないのが残念だ。

「おはよう、アヤト」
「ん?キリトか。おはよう」

後ろの扉からキリトが顔を出した。
キリトも既に着替えており、俺の隣に立った。

「なぁキリト。一つお前に聞きたいことがあるんだけどさ」
「何だよ。急に改まって」

キリトは不思議そうに俺を見つめる。
俺は数秒話す内容を整理して言葉に出した。

「真っ白いコートを着ていて、身長は俺たち程で、顔は何というか中性的というか……雰囲気キリトに似てるんだけど知らないか?」
「?……知らないな。白を基調とした装備の人だっていうなら血盟騎士団なのか?」
「いや、多分あれは血盟騎士団の制服じゃないな。どちらかといえば、お前のそのコートに似ていたかな」
「これか?うーん。やっぱり知らないな……その人がどうかしたのか?」
「…………いや、なんでもない。やっぱり忘れてくれ」
「そうか?分かった」

沈黙。
俺たちは霧の中を見つめる。
(き、気まずい……。そりゃあその人が夢で出て来てキリトと話をしていたから聞いたなんて言えないわ。ん?)
俺に一件のメッセージが届いた。さっとメニュー欄を開いて開封してみる。ネズハからだ

「キリト。ちょっとネズハの所に《ライト・コンダクター》を取りに行くよ。丁度メンテナンスが完了したって。すぐ戻る」
「おう、いってら」

圏内だが、一応《クラレット》を装備して霧の中を歩いて行く。もうすぐ転移門だ。
俺は眼を凝らしていると、あったあった。

「転移!《タラン》!」

体が光りはじめ、目を開けるとそこには第2層のタランの街が────って、あれ?
俺は目を開けて辺りを見渡す。

「タランじゃ……ない?ここ、どこだ?」

街の中なのはわかるが、この雰囲気は明らかに第二層ではない。何だココ?

「とりあえず現在地現在地っと────は?」

第76層《アークソフィア》

「だ、第……76……層?そんな馬鹿な……つい最近74層を突破したばかりだぞ……。よく分からないが、早く《タラン》に行こう。転移門に触れて……転移!《タラン》!」

俺の声が寂しく木霊する。転移による体が光るエフェクトも発生しない。俺は冷や汗が一筋流れるのを感じた。

「転移!《タラン》!何で何も起こらないんだ!?転移!《タフト》!転移!《グランザム》!転移!《はじまりの街》!」

どれだけ言っても何処を言っても反応がない。
転移結晶を出してみても結果は同じ。どれだけやってもこの76層から下の層に行けない。
仕方ないこうなったらキリトに────。

「えっ……」

な、何でキリトの文字に棒線が引いてあるんだ……?これって、ダッカーやテツオやササマルの欄に付いてたのと同じ……って事は……

「嘘だろ……?そんなのありえない。キリトが死ぬ訳がない……」

俺は何度も目をこすったり、フレンドリストを再更新したりしてみるが、何も変わらない。

「そん……な。もしかして、あの夢の続きなのか?こんなふざけた事はそれぐらいしか考えられない」

俺は強く目を瞑って念じる。
覚めろ覚めろ!いくら念じても何も起こらない。

「そうだ!コハルは!?アスナは!?ミストにサチ!ケイタは!?」

フレンドリストをスクロールしていくと、

「な、サチ……ケイタ……死亡?何だよ……何なんだよこれ!」

俺はどんどんスクロールする指を早める。コハルは?コハルは何処だ?
しかし、いくら探してもコハルの文字が現れない。
顔の血の気が引いていくのを感じる。

「無い……!無い……!何で無いんだよ────あ」

遂に一番下まで到達した。そこにコハルの名前はない。

「無いだと?何なんだよ……クs────」

突然視界が歪む。俺の意識は途切れた。















「ん、んん?」

気がつくと、何処かの建物の様な所に連れて来られたようだ。今いるところは……ベッドか?

「ん?目が覚めた様だね。大丈夫?」
「あ、ああ。大丈夫だ。ありがとうな──────」

言葉が途切れた。声をかけてきたのはあの夢で見た少年だった。 
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