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幼稚園の先生と

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第四章

「だからな」
「奈津美ちゃんもね」
「果たしてどうなるか」
「わかったものじゃないわ」
「私気持ちは変わらないから」
 しかし奈津美だけはこう言った。
「何があってもね」
「本当にか?」
「先生への気持ちは変わらないの?」
「高校を卒業したらお嫁さんになる」
「その気持ちは」
「変わる筈ないから」
 絶対にという言葉だった。
「だって私決めたから。お母さんが言ったじゃない」
 母のその目を見て言った。
「一度決めたことはすぐに変えるなって」
「それはそうだけれど」
「お父さんも言ったじゃない」
 今度は父のその目を見て言った。
「好きになった人はずっと好きでいろって」
「だからお父さんはお母さんも奈津美も好きだぞ」
「だったらよ」
 両親の言葉を出してまた言ったのだった。
「私もずっとね」
「先生を好きでいてか」
「そうしてなの」
「いいお嫁さんになる為に頑張っていって」
「将来はなのね」
「そう、先生のお嫁さんになるから」
 絶対にとだ、今も言う奈津美だった。
「何があってもね」
「本当にそうなるか?」
「ならないわよ」
 両親は自分達の娘の決意に眉を曇らせて話した。
「子供の言うことだから」
「そうだよな」
「奈津美は八歳なのよ」
「そんな小さな娘の言うことなんてな」
「これから色々あるのに」
「高校を卒業するまででもね」
 その十年の間にというのだ。
「だったらね」
「幼稚園の時の先生と結婚するなんてな」
「有り得ないわよ」
「どう考えてもな」
「私はそうなるの」
 奈津美だけは確かに信じていて言った。
「絶対に」
「なる筈もないと思うが」
「そんなことが」
 両親は信じていなかった、それは奈津美の友人達もでだ。
 そんなことがなる筈がないと思っていた、それでクラスの口さがない男子生徒達に至っては奈津美本人を囃し立てて言った。
「幼稚園の時の先生となんてな」
「結婚出来る筈ないだろ」
「どれだけ歳離れてるんだよ」
「そんなの無理に決まってるだろ」
「歳の差なんてどうでもいいのよ」
 しかし奈津美は彼等にも毅然として言った。
「人が好きなら」
「どうでもいい筈ないだろ」
「御前その先生と幾つ離れてるんだよ」
「そんなこと言っててすぐに他の誰か好きになるさ」
「誰だってそうだろ」
「私は違うのよ」
 あくまでこう言う奈津美だった。 
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