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幼稚園の先生と

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第二章

「じゃあ私頑張るね」
「先生と結婚出来る様にな」
「いい娘になるね」
「お父さんと約束だぞ」
「お母さんともね」
 ここで母も言ってきた。
「いいわね」
「そうするわ」
 まだ幼いながらもだ、奈津美は約束した。そうしてさらにだった。
 両親にだ、奈津美はさらに尋ねた。
「私何時になったら結婚出来るのかしら」
「先生とか」
「何時結婚出来るかなのね」
「うん、何歳になったら結婚出来るの?」 
 今は無理と聞いてそう聞いたのだ。
「一体」
「十六歳になったら出来るんだ」
 父が答えた。
「その歳になったら」
「十六歳になの」
「その時に結婚出来る、けれどな」
「十六歳は高校生だから」
 母も奈津美に話した。
「実際はまだ無理なの」
「そうなの」
「高校を卒業したらね」
「結婚出来るのね」
「そうよ」
「じゃあ私高校を卒業したら先生と結婚出来るのね」
 奈津美は両親の説明を聞いてこう解釈した。
「そうなのね」
「ああ、高校を卒業したらな」
「もう誰にも何も言われないわ」
「奈津美も立派な奥さんになれるぞ」
「先生と結婚出来るわよ」
「わかったわ、じゃあ私立派な奥さんになる為に頑張って」
 そしてとだ、奈津美は両親にあらためて約束した。
「そうして高校も卒業して」
「そうしてからだな」
「先生と結婚するのね」
「そうするわ」
 絶対にとだ、奈津美は両親にあらためて約束した。そうしてからだった。
 奈津美は幼稚園でもその先生、水本慎に話した。背が高くすらりとしていて清潔で優しい顔立ちには眼鏡がある。エプロンとズボンがよく似合っている。奈津美はその先生のところに来て言ったのだ。
「私大人になったら先生のお嫁さんになるね」
「僕のですか?」
「うん、絶対になるから」
 水本を見上げて言った。
「高校を卒業したらね」
「高校を卒業したらですか」
「すぐに先生のところに行くから」
「そうしてですか」
「先生のお嫁さんになるの」
 こう言うのだった。
「そうするから」
「僕のお嫁さんですか」
 水本は奈津美に言われて戸惑いつつ応えた。
「それはまた」
「駄目なの?」
「プロポーズですよね」
 水本は少し真剣な顔になって奈津美に応えた。
「そうですよね」
「プロポーズって?」
「好きな人に結婚して下さいということです」
 水本は奈津美にプロポーズの意味を説明した。
「そういうことです」
「そうなの」
「ですから」
「それでなの」
「プロポーズなら」
 それならと言うのだった。 
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