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夜の烏

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第四章

「蝙蝠の種類まで」
「猿は昼の仕事でフクロウは夜の物見、烏は昼で鼠は細かいところを見させて狼は鼻を使ってそして大蝙蝠は夜の仕事か」
「一体何のお話やら」
「そなた獣使いであるが獣達を使って盗みをしているな」
 喜久子は半三郎にさらに言った。
「そうであったな」
「いえいえ、滅相もない」
「大蝙蝠なら障子を開けてギャマンの壺を盗んで飛び去ることが出来る」
「そんなこと出来ませんよ」
「そうか、ではこれよりそなたの家を調べるか」
 喜久子は何かを隠している、傍からもそう見える半三郎にこうも言った。
「畳の裏にでもあればどうするか」
「ですからそんなことは」
「あればどうする、ここで言えば罪は減じられるぞ」
 家探しして出て来ればどうなるか、喜久子は半三郎に告げた。
「どうか」
「わ、わかりやした」
 ここで半三郎も観念した、そしてだった。
 彼は全てを白状した、ギャマンの壺は喜久子が言った通りに盗んでいて獣達も実際にそうして使っていた。家を探すと畳の下にギャマンの壺があり他に盗んだものもあった。こうして事件は終わってだった。
 半三郎は裁きを受けこれまで数々の盗みを行ったこともあって一度打ち首となり復活の術をかけて蘇えらさせられてからだった。佐渡に送られそこで十回死ぬまで働かさせられることになった。その裁きが終わってからだった。
 喜久子は綾乃達の前に来てそうしてことの全てを話した、すると綾乃は唸って言った。
「いや、見てたけどな」
「見事なものやったわ」
 中里もこう言った。
「僕には下手人がわからんかったわ」
「うちもやったわ」
「けどな」
「獣使っての盗みやってんな」
「はい、他の下手人と思われる者はどうしてもです」 
 彼等の職業ではとだ、喜久子は二人に話した。
「結界に阻まれるかそもそも入られないか」
「だからやね」
「盗めないんやな」
「はい、しかし」
 それでもというのだ。
「あの者は違いました」
「獣を使えば盗める」
「それが出来るか」
「この世界の大蝙蝠は凄い大きさです」
 その大きさならというのだ。
「ギャマンの壺ですらです」
「掴んで跳んで運べる」
「それが出来るか」
「はい」
 まさにというのだ。
「ですから」
「それでか」
「ああした推理をしたんやな」
「それが出来ました、獣も上手に使えば」
 それでというのだ。 
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