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戦国異伝供書

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第十二話 苦闘の中でその十一

「しかしな」
「それでもですな」
「鉄砲や長槍を前に出せば」
「その騎馬隊も近寄れぬ」
「だからですな」
「両家との戦でも使っていきまするな」
「鉄砲を撃ちじゃ」
 信長は家臣達に具体的な戦い方も話した。
「そして敵の軍勢が近寄ればな」
「長槍ですな」
「あれを前に出し槍衾を作り」
「そうしてですな」
「敵の騎馬隊を近寄らせぬ様にしますな」
「そうじゃ、わしが言うまで前には出るな」
 それは許さないというのだ。
「前に出れば死ぬぞ」
「ですな、迂闊にそうすれば」
「武田家や上杉家の強さを見ますと」
「むざむざ死にに行く様なものです」
「無駄死にするだけです」
「無駄死には許さん」
 それは決してと言うのだった。
「だからじゃ」
「はい、それでは」
「鉄砲を放ち長槍で衾を作り」
「そうしてですな」
「戦っていくのですな」
「そうするのじゃ。そして心得ておくことじゃが」
 信長は家臣達にさらに話した。
「当家の軍勢は多い、しかしな」
「弱いですな」
「当家の兵は」
「どうしても」
「尾張や上方の者が多い」
 領国にしている国々から兵が集まる、だが織田家が領地にしている国々はその殆どが兵が弱い国なのだ。
 それでだ、信長も言うのだ。
「弱兵ばかりじゃ、その弱兵でじゃ」
「数が多くとも」
「甲斐や越後の兵と戦えば」
「そうなればですか」
「我等の兵を犬とすれば相手の兵は狼じゃ」
 強さがそこまで違うというのだ。
「そしてじゃ」
「さらにですな」
「率いる将帥も狼」
「特に信玄公と謙信公は虎や龍と言われています」
「主であるお二人がそこまでですと」
「弱兵で戦うには」
「大軍でよい武具で迂闊に攻めぬことじゃ」
 そこまでしてというのだ。
「適う、だからな」
「それで、ですな」
「用心して戦う」
「そうしていきますな」
「その通りじゃ、では武田家及び上杉家が動けば」 
 その時点でというのだ。
「当家もすぐに動くぞ」
「わかり申した」
 家臣達は信長に応えた、一向宗を石山のみに追い詰め今は連戦の疲れを休めているが次の戦はもうはじまろうとしていた。
 それでだ、信長は浜松にいる家康に向けて文を送ったがその後でだった。
 飛騨者達にだ、こう言ったのだった。
「よいか」
「ああ、わし等はだな」
「戦が起こればすぐに浜松に向かう」
「そうせよというのですな」
「そうじゃ、兵の援軍は送れぬが」
 しかしというのだ。 
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