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修士の後は

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第二章

「ですが」
「それでもかね」
「はい、魔法博士になることは」
「何度も言うが目指すことだ」
「目指すことですか」
「絶対になれとは私も言っていない」
 人間の教授は長く白い髭をしごきながらルティアに話した、その目の光は如何にも学者然としたものだ。
「それはだ」
「では」
「そうだ、あくまで目指してだ」
 そうしてというのだ。
「励むことだ」
「そうすることなのですね」
「私が言っていることはな、それにだ」
 教授はルティアにさらに話した。
「怯えてばかりでだ」
「何もしないではですね」
「何も出来ないのだよ」
 ルティアにこのことも言うのだった。
「だからだよ」
「まずはですね」
「そうだ、君は優秀だ」
 ルティアのこのことは認めた。
 しかしだ、彼女の長所を認めると共にさらに言うのだった。
「だがその気弱な引っ込み思案はな」
「このことはですね」
「そうだ、抑えてだ」
 そのうえでというのだ。
「君は前に進むべきなのだよ」
「引っ込み思案を抑えて」
「自信を持ってだ、現に君はこの魔法学校で入学以来主席でだ」
「あれは」
「たまたまではない、入学から卒業まで主席なぞだ」
 とてもというのだ。
「優秀でなければ出来ない、そして」
「そしてですか」
「そうだ、修士課程も終えて論文も実戦も優秀だった」
 そうして修士になったからだというのだ。
「君はだ」
「自信を持っていいのですか」
「魔法についてはな」
 まさにというのだ。
「だからだ」
「博士課程、そして魔法博士のことも」
「まずは自信を以てだ」
 そのうえでというのだ。
「進めることだ、ではこれからはな」
「学校に残って」
「教壇に立ってですね」
「高給は約束される、部屋もこれまでは寮だったが」
 それがというのだ。
「個室になる、風呂とトイレもついたな」
「それはまた」
「贅沢になるな、生活は保障される」
 そうなることもルティアに話した。
「だからだ」
「私はですね」
「教壇に立ったうえでだ」
「六つの魔術の博士となり」
「魔法博士を目指すといい」
「一つの術でも博士号を得ることは難しいですが」
「まずはやってみることだ。いいね」
「はい」
 ルティアはまだ自信がない顔だったが教授の言葉に頷いた、そうして実際に教壇に立ちつつ六つの術の博士課程を学んでいった。
 するとだ、一つ一つ確実にだった。
 博士号を得ていき何と十年でだった。
 六つの博士号全てを得て魔法博士となった、それでまだ学校に残っている教授に対して言うのだった。
「まさか」
「魔法博士になるとはか」
「それも十年で」
「私も驚いている、しかしだ」
「しかし?」
「君は魔法博士になった」
 大陸のこれまでの長い歴史の中で五人と出ていなかったそれにというのだ。 
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