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育てて二十年

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第三章

 水汲み用の桶にして何十杯はあるかという位飲んでからだ、動きを止めて。 
 身体が光りその光の中で姿を徐々に変えていった、身体が大きくなり四肢も頭も首もその姿を変えていき。
 光が消えた時竜の子は全長五メートル程のイエロードラゴンになった、それで池に移った自分の顔を見て言った。
「あれっ、おいら」
「うむ、わしもはじめて見たが」
 一部始終を見届けた隠者は彼に真剣な顔で答えた。
「御前は成長してだ」
「ドラゴンになったんだ」
「いや、元からドラゴンであって姿が変わったのだ」
「ドラゴンの姿に」
「そうだ、なったのだ」
 そうなったというのだ。
「御前はな」
「そうなんだ」
「竜の子がドラゴンになるのは知っていたが」
 それでもとだ、隠者は竜の子にさらに話した。
「この目でその場面を見たのははじめてだった。そうして変わるのか」
「そうだったんだね」
「うむ、ずっと姿が変わらなかったが」
 二十年の間そうだったがというのだ。
「そうして変わるか、そして御前はな」
「このドラゴンの姿でだね」
「生きる、後はその身体は徐々に大きくなるのであろう」
 歳を経るにつれというのだ。
「ドラゴンの身体になったからな」
「ううん、不思議な気分だよ」
「急に姿が変わってか」
「喉が渇いていたのもそのせいだったのかな」
「姿が変わるのに多くの水の力が必要だったのだろう」
「そうだったんだ」
「姿が変わるのに多くの熱が出てな」
 それでというのだ。
「身体にあるその熱を冷やしてそのうえで今の様に姿を変える為にな」
「だからおいらは水を飲んで」
「姿を変えることが出来た、それでこれからどうする」
 隠者はここで竜の子に問うた。
「御前はドラゴンの姿になったがな」
「おとうと一緒に暮らすかどうか」
「そうだ、どうする」
「これだけ大きいとお家には暮らせないけれど」
 それでもとだ、竜の子は隠者に答えた。
「近くの洞窟に住んでね」
「この森にはか」
「おとうと同じ森に暮らしていいかな」
「わしに異存はない。ならわしもだ」
「おとうもなんだ」
「その洞窟で暮らすか」
 隠者は竜の子にここでも暖かい笑顔で応えた。
「そうするか」
「そうしてくれるんだ」
「御前を育ててきたのはわしだ、御前はわしの子供だからな」
 絆がそうなっているからだというのだ。
「それではな」
「じゃあこれからは洞窟でね」
「共に暮らそうぞ」
 こうしてだった、ドラゴンの姿になった竜の子は森の洞窟に隠者と共に移り住んだ。隠者はこのことを樵に伝えた。 
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