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戦国異伝供書

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第十一話 退く中でその四

「この度のことは」
「ううむ、考えれば考える程」
「わかりませぬな」
 織田家の者達はこう話しつつもだ、そのうえで。
 軍勢を素早く金ヶ崎から退けさせてだ、それから。
 近江を素早く南下した、その最中あまり休まずに一路都まで戻った。幸いにして命を落とした者は殆どおらず。
 兵糧も武具もかなり無事だった、流石に後詰の羽柴の軍勢は違ったが。
 織田家はほぼ無傷と言えばそれで信長も言った。
「この度のことはな」
「はい、大変でしたが」
「危ういところでした」
「あともう少し遅いと」
「果たしてどうなっていたか」
「しかしな」
 それでもと言うのだった。
「我等は何とかじゃ」
「はい、退けました」
「無事にです」
「それではですな」
「これより」
「あらためて戦じゃ」
 信長は家臣達に答えた。
「そしてその相手はな」
「朝倉殿とですな」
「浅井殿ですな」
「両家ですな」
「何処かの家が介入する前にじゃ」
 まさにと言うのだった。
「よいな」
「はい、それでは」
「これよりですな」
「朝倉家だけでなく浅井家との戦の用意に入る」
「そうするのですな」
「そうせよ、そしてじゃ」 
 そのうえでというのだ。
「よいな」
「はい、これよりです」
「戦の用意に入ります」
「あらためて」
「そうせよ、そして猿夜叉じゃが」
 信長は長政のことも話した。
「出来るだけな」
「はい、戦えどですな」
「この度のことを聞いて」
「そしてですな」
「もう一度迎え入れたい、戦だから全力で戦うが」
 しかしというのだ。
「それでもじゃ」
「浅井家は滅ぼさず」
「もう一度ですな」
「迎え入れたい、しかしじゃ」
 こうも言う信長だった。
「何故あ奴がわしに弓引いた」
「そのことはですか」
「殿にもですか」
「わかりませぬか」
「左様ですか」
「うむ、わからぬ」 
 実際にというのだ。
「どうしてもな」
「我等もです」
「そのことがどうもわかりませぬ」
「何故あの方が裏切られたか」
「猿夜叉殿程の方が」
「あ奴は律儀でしかも意志も強くな」
 そしてというのだ。
「野心もない」
「裏切る要素がないですな」
「それも一切」
「そうした方ですな」
「それでどうして裏切った」
 こう言うのだった。
「そうした者が」
「一体何故か」
「それがどうしてもわからず」
「我等もです」
「不思議に思っています」
「全くじゃ、しかしな」
 それでもと言うのだった。 
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