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戦国異伝供書

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第九話 天守その十一

「そしてそれによってです」
「天下はどんどん豊かになっておるな」
「そのまま当家の富にもなっています」
「左様じゃな」
「例えば播磨の塩ですが」
「塩は絶対にいるからのう」
「そうです、多くの富を生んでいます」
 織田家にとってだ。
「播磨の者達も潤い」
「よいこと尽くめじゃな」
「まことに、まさに殿の政はです」
「天下の政じゃな」
「そう思いまする、そしてその中で」
「百姓達も茶や味噌を楽しめる様になるか」
「ひいては米も」
 それもというのだ。
「多く食える様になりましょう」
「その米は白い米か」
「左様です」
 玄米や雑穀を入れたものでなくだ。
「粥でもです」
「わしがよく食う挽き米でなくか」
「普通の米で。何でも茶粥という粥もあるそうですが」
「茶で味付けした粥か」
「そうです、そうしたものもあるとのことですが」
「何と贅沢な粥じゃ」
 茶は高価なものだ、羽柴はその考えから述べた。
「そんなものがあるとはのう」
「そしてその茶粥もです」
「百姓達が普通に楽しめるか」
「そうなりましょう」
「天下はそこまで変わるか」
「やがては砂糖もそうなるでしょうか、それも白い」
「幾ら何でもそれは先であろう」
 白い砂糖ともなると途方もなく貴重だ、それで羽柴は弟にこう述べたのだ。
「流石に」
「はい、しかしです」
「それでもか」
「やがてはです」
「民達が白い砂糖も楽しめるか」
「そうした風になるかと」
「茶や味噌、白い米だけでなくか」
 羽柴は唸る様に言った。
「そこまで豊かになるか、いやしたいと思った」
「その意気です、では」
「うむ、これからもな」
「政に励んでいきましょうぞ」
 秀長は兄に微笑んで述べた。
「殿の下で」
「是非な、それに功を挙げていけば」
「今以上にですな」
「禄も上がるわ」
「今は万石取りですが」
「その石高をな」
 今以上にというのだ。
「上げてじゃ、若し十万石ともなれば」
「当家がそれだけになれば」
「どうじゃ、凄いであろう」
「母上も贅沢が出来ますな」
「今より遥かにな」
「姉上も妹も」
「皆じゃ」
 まさにと言うのだった。 
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