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空に星が輝く様に

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61部分:第五話 部活でその十


第五話 部活でその十

「走ってるのって」
「ああ、居合部も走ってるよな」
「向こうは袴でな」
「何か大変だな」
 こう言うのだった。
「動きにくいだろうな」
「何で朝はジャージで放課後は袴なんだ?あっちは」
「先生の方針らしいぜ、顧問のな」
 こうしたことを話しながらのランニングだった。
「朝は時間がないから仕方ないけれど居合は日本の心だから」
「心か」
「だからちゃんと袴を着て何でもするんだと」
 だからだというのである。
「それでらしいぜ」
「何かうちの剣道部と全然違うな」
「こういう時はジャージだからな」
「だよな。楽だしな」
 このことに喜んでもいる彼等だった。
「ジャージってな」
「あの先生とにかく走れって言うらしいぜ」
「ああ、野球の話出してまで言うしな」
「それはわかるよな」
「それとだ」
 ここで二年の先輩が彼等に言ってきた。
「あの先生の前で阪神の悪口は言うなよ」
「ああ、阪神ファンなんですね」
「それでなんですか」
「虎キチだ」
 俗に言う熱狂的阪神ファンのことである。阪神という球団はとにかく人を熱狂させるものがある。どんなことになっても絵になるだからだろうか。
「そして巨人はだ」
「嫌いなんですね」
「それもかなりですか」
「ああ、巨人が勝ったらその日は自棄酒だ」
 よくある話だ。
「阪神に勝ったらな」
「うわ、大変な先生なんですね」
「じゃあ次の日は機嫌が悪いんですか」
「とはいっても授業や部活には影響させないがな」
 つまり節度があるというのである。学校の教師という職業にはそうした節度を持っている人間が少ないのも残念ながら事実である。
「まあそれでもだ」
「巨人ファンって言ったら駄目なんですね」
「それは」
「死にたくなければ言うな」
 結論はそれだった。
「わかったらいいな」
「まあ俺達も阪神ファンですし」
「巨人ファンいるか?」
「俺ソフトバンクだけれど駄目か?」
「リーグ違ったらいいんじゃないのか?」
 走りながらそんな話をするのだった。
「別にな」
「そうだよな、巨人じゃないといいよな」
「そうだよな」
「おい、斉宮だったよな」
 陽太郎にも話が来た。彼は野球の話になったところで黙っていたのだ。その彼にも話が来たのである。
「御前は何処のファンなんだ?」
「何処なんだ?」
 同級生達がそれを尋ねる。
「阪神か?それとも他のチームか?」
「巨人じゃないよな」
「ああ、日本ハム」
 こう答える彼だった。
「セリーグは阪神だけれどな」
「じゃあいいんじゃないか?」
「阪神だったらな」
「巨人は嫌いか」
「ああ、嫌いだけれどな」
 これは本当のことである。彼はアンチ巨人でもある。なお彼の一家はパリーグはばらばらだがセリーグは阪神で統一されている。そして嫌いな球団も巨人で統一されている。一家全員由緒正しいアンチ巨人なのだ。
「負けたらやっぱり嬉しいよな」
「だよな、やっぱり巨人はな」
「さっさと負けろよな」
「そうそう」
「負けろ負けろ」
 こんなことを話しながら走っていた。この日はこうしたランニングと筋力トレーニング、それと素振りをしていた。基礎的な練習専門だった。
 
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