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戦国異伝供書

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第八話 浅井家の内その四

「それで朝倉家を担いで乱なぞ起こされては」
「起こすか」
「その危険はありますが」
「宗滴殿がおらん朝倉家をか」
 信長は佐久間に問い返した。
「そうしてどうする」
「何もならぬというのですな」
「牛助、お主は宗滴殿がおられぬ朝倉家は怖いか」
「いえ」
 即座にだ、佐久間は信長に答えた。
「ものの数ではありませぬ」
「ではわかるな」
「そうですか、それでは」
「忠三郎にも言ったが担ぐのは担ぎがいがある相手よ」
 信長は佐久間に不敵な笑みで語った。
「そうでなければな」
「担ぐこともない」
「朝倉殿は越前から遠く離れた寺に出家してもらう」
「越前の者達が担げぬ様に」
「そうしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「越前を治める、しかしあの国もな」
「一向一揆ですな」
「あの者達がありますな」
「そちらの方が気になる」
 信長にとってはそうだった、朝倉家よりも一向一揆の方が気になるのだ。それで佐久間にも蒲生にも言ったのだ。
「どうもな」
「やはりそうですな、あの者達はです」
「気になりますな」
「今はあの寺とは何でもないが」
 それでもというのだ。
「揉めればな」
「その時はですな」
「恐ろしいことになりますな」
「そうじゃ、そこが気になる」
 一向一揆、彼等がというのだ。
「どうするかじゃ」
「ですな、越前にもあの者達が多いです」
「そう考えますと」
「越前を手に入れてあの国も慎重な政を行うか」
 こう言ってだ、そうしてだった。
 信長は越前のことも考えていった、まだこの国は織田家の領地ではないがそこからも問題であった。
 それでだ、佐久間と蒲生にあらためて話した。
「やはり朝倉家との戦は避けられぬであろうからな」
「そちらの用意はですな」
「しかとしておきますか」
「越前攻めの用意を」
「それを」
「近江の南を拠点として琵琶湖の西から攻め上がる」
 信長は既にそこまで考えていた。
「そうして金ヶ崎城を抑えてな」
「そうしてですな」
「うむ、そこから朝倉家の領土に大軍で雪崩れ込む」
 そうするというのだ。
「そうしてじゃ」
「一気にですな」
「越前を抑えるのすな」
「無論一乗谷城も攻める」 
 朝倉家の本城であるこの城もというのだ。
「こちらも大軍でな」
「その大軍ですが」
 佐久間は目を光らせて信長に尋ねた。
「どの程度でしょうか」
「十万じゃな」
「十万で、ですな」
「そうじゃ、十万あれば充分であろう」
「はい」 
 佐久間もこう答えた。
「それだけあれば」
「朝倉家を破ってな」
「越前を攻め取れます」
「しかも楽にな」
「間違いなく、ですが」
「それでもじゃな」
「そこから先は」
 一向一揆、彼等のことはというと。 
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