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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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最終章:夢を追い続けて
  第76話「エピローグ」

 
前書き
最終話 

 












「………」

 空を眺める。
 都会ではもう見る事の出来なかった満弁の星空がそこにはあった。
 星空を見る事が別段好きという訳ではないが、これほど星が見えるのは感慨深い。

「……ここまで、長かったなぁ……」

 苦しみ抜き、復讐に燃え、でもそれをするほど憎悪は長持ちしなくて。
 復讐の相手は結果的に反省した。
 せっかくの学生生活はテロリストに一度潰された。
 でも、そのあと改めて別の高校で充実した学生生活を送った。
 ……その裏では桜さん達を止める準備をしていたんだけどな。

「(そして、決着をつけた)」

 桜さん達は自分たちを世界の敵とする事で、世界をコントロールしようとした。
 自分たちの夢である“宇宙に羽ばたく”事を目的として。
 それは最終的には自分たちに自由をなくすという諸刃の剣となるものだった。
 それでも成そうとした桜さん達を止めるため、俺たちが立ち上がった。

「……決着をつけてからも、色々大変だったな」

 決着後、まず俺は体の怪我を治す事に専念しなければならなかった。
 しかも、それに平行して後始末もしなければならないと来た。
 さらには、釈放後の桜さん達の受け皿とするための場所も必要だった。
 会社の一員としては中堅がいい所の俺でも、仕事量が半端なかった。
 桜さんを止めた張本人としても、メディアがうるさかったしな。

「………」

 だが、今はそれも落ち着いている。
 順調に宇宙開発は進んでおり、ISによる女尊男卑はほとんどなくなっている。
 ……それでも、一部は未だにそれを主張している輩がいるが。
 まぁ、そういった連中はISが出る前から主張していた輩だから大した事はないだろう。
 女性が差別されてるとかだったら耳を傾けただろうけど、主張しているのは女性の方が優れているだの、もろ女尊男卑な主張だし。

「(……思い返してみれば、相当便利な世の中になったよな)」

 過去を思い出す際に、桜さん達が刑期を縮めるためにやった事を思い出す。
 便利な道具や機械の発明だけでなく、インフラの改善や砂漠化の解消。
 それだけでなく、世界中で問題視もされていた地球温暖化など。
 様々な分野においてあの人達は貢献した。
 ……まぁ、あれだけの天才が本気を出せば、これぐらいやれるんだろう。

 そういや、以前は二人ともあまり周りと協調出来てなかったらしいが……。
 多分、会社を立ち上げて、他人との交流が増えた事で、それも改善されたんだろう。
 そう考えると、今までの全てがこの結果に繋がっていると思えてくる。

「(……なんて思うのは、ちょっと思い上がってるかな?)」

 二人はまさしく“本気を出していなかった”のだろう。
 桜さんはともかく、束さんはずっと“理解されなかった”のだから。
 だから周りを遠ざけて、“孤独”だったんだ。
 もし桜さんが重傷を負ってあの時まで眠ったままでいなければこうならなかった。
 束さんには桜さんがいれば、いずれはこうなっていたのだろう。

「……って、いけね」

 随分と過去を思い返すのに時間をかけていたらしい。
 腕時計を見てみれば、結構時間が過ぎていた。

「(やるべき事、やらないといけない事がひと段落ついたから、俺も気が抜けてるんだろうな)」

 しっかりしないと。
 いくら山場を越えたとはいえ、普通に仕事とかはあるんだから。

「……ま、休憩も終わった所だし、戻りますか」

 そう言って、俺は一度“青い星”を見上げてから踵を返した。









「ええっ!?桜さん、遅れるんですか!?」

【悪いっ!ちょっと没頭しすぎて時間を見てなかった!】

「いくら好きな事をやってるからって、限度がありますよ……」

 仕事にひと段落をつけ、桜さんと連絡を取ると、そんな言葉が返ってきた。
 いくら宇宙開拓を進める事だからって、時間を忘れるとは……。

「というか、桜さんらしくありませんね?」

【いやぁ、こと宇宙とISに関する事だったら俺でもこうなるぞ?】

「そういうものですかねぇ……」

 まぁ、遅れるのが確定してしまうのはしょうがいないだろう。

「でも、主役が遅れるのはどうかと……」

 桜さんが遅れると言っているのは、桜さんの誕生日パーティーだ。
 だからこそ、主役である桜さんが遅れるっていうのは、ちょっとな……。

【だからこうして事前に連絡してるじゃないか。それに、遅れるにしてもできるだけ早く帰るさ。……問題は、束と千冬、ユーリちゃんにどう連絡しようか……】

「そこは自分で考えてください」

 拗ねるであろう三人にどう連絡しようか悩んでいる桜さん。
 あと、セシリア辺りも拗ねると思うんだが、どうするつもりなのやら。

「じゃあ、俺は先に()()に帰っておきますね?」

【ああ。出来れば三人に何かしらフォローを―――】

「自力でやってください」

 有無を言わさず通信を切る。
 そして、“青い星”……地球を見上げて俺は帰る準備を始めた。

「数年前までは、まだ理論上の話だったのに、本当に早いな……」

 そう。俺は今、“月”にいる。
 宇宙開発が進み、本格的な月面基地が設置されたのだ。
 今では、月で一年は過ごせるぐらいに発展している。
 
「(……まぁ、まだまだだ。もっと……もっと、ISは羽ばたける)」

 それこそ、“無限の成層圏”の名に恥じないように。

「……とりあえず、目先は桜さんの誕生日パーティーだな」

 桜さんにああ言った手前、前言撤回するようだけど、三人……セシリアも入れて四人に事情説明ぐらいはしておくか。















   ―――……苦労をしたことは幾度となくあった。

   ―――だけど、だからこそ“今”を生きている。

   ―――無限に羽ばたける“翼”と共に。























       IS~夢を追い求める者~

          ――完――

















 
 

 
後書き
ぶっちゃけ全体を通してみると我ながら「これでいいのか?」となる。
それがこの作品です(´・ω・`)

公開したからにはエタる訳にはいかないと、ちょっとした意地で完結までこぎつけましたが……正直、自分にはこういった話はまだハードルが高かったと思います。
話の構成の甘さや、心情の描写不足。話を進めるに連れ、迷走していく方向性。なんかもう、色々と経験不足でした(´・ω・`)
それでも最後まで読んでくださった方に、多大な感謝を。



……なお、処女作よりも先に完結したのがこれで二作品目に……。
話数の差が圧倒的なんで仕方ないですけどね。 
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