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戦国異伝供書

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第七話 長可の修行その六

「うむ、かなりよくなったな」
「そう言って頂けますか」
「落ち着きが出て来たわ」
 笑みを浮かべての言葉だった。
「ではこれからもな」
「修行に励み」
「そしてさらに落ち着き学問も備えてな」
 そうしてというのだ。
「よくなるのじゃ」
「わかり申した」
「それで酒もじゃな」
「はい、近頃は」
「飲む量が少なくなっておるな」
「そちらもと思いまして」
 雪斎と話した通りにだ。
「それで、であります」
「少なくしていっておるか」
「左様であります」
「それもよい、酒もな」
「あまり、ですな」
「飲み過ぎるとな」
 それはというのだ。
「やはりよくない」
「左様ですな」
「あれは乱れるしな」
 飲み過ぎるとだ。
「それにじゃ」
「身体にもですな」
「よくはない」
 壊すもとだというのだ。
「だからな」
「はい、それでは」
「己を高めていくがよい」
「酒のことでも」
「うむ」
 こう我が子に言うのだった。
「それではな」
「そして何時しか」
「わしを超えるか」
「そうしてみせます」
 強い声でだ、長可は父に応えた。
「そうさせて頂きます」
「ではな、しかしな」
「しかし?」
「わしもそうそう超えられるつもりはないぞ」
 森は我が子にこうも言った。
「言っておくがな」
「では父上は今も」
「文武に鍛錬を積んでおるわ」
「そうしてですか」
「織田家と天下に奉公してな」
「ご自身も高めておられますか」
「そのつもりじゃ、今度戦があるとすれば朝倉家とすることになろうが」
 この家のこともだ、森は話した。
「あの家のことはお主も知っていよう」
「はい、朝倉宗滴殿がおられます」
「あの御仁は強いぞ」
「まさに天下の名将ですな」
「かなりのご高齢であるが」
 それでもとだ、森は言うのだった。
「今だその腕は衰え知らずというかな」
「むしろさらにですな」
「冴え渡っておるわ」
「一向一揆にも負け知らずで」
「恐ろしい強さじゃ」
「その朝倉家とことを構えるならば」
「必ずあの御仁と戦うことになる」
 そうなるというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「お主もその時の為に修行をしてじゃ」
「己を高め」
「あの御仁に打ち勝つ様になれ」
「わかりました、それでは」
「うむ、わしもじゃ」
 それこそと言った森だった。 
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